東の館にて 星に願いを
疑いは晴れ大家さんとの信頼関係はより強固なものになった。
そうだ忘れていた。大家さんの推理の途中だった。
いつの間にか聞きそびれ現在に至る。
今更聞き返す雰囲気でもないしな……
東の館に到着。
現場検証を終え誰も寄り付かない呪われた館。
村人の間で良くない噂が広がっている。
夜になるとあのサライちゃんが動き出し追いかけるだとか。
アリサさんと一緒に消えてしまうだとか。
それ以外にも真偽不明の噂が流れている。
村人たちの不安な心がそうさせるのだろう。
ありもしない話を流すことによって恐怖や不安から目をそらそうとしている。
自己防衛が働いている。
今は見張りもおらず実に静かだ。逆に不気味。
「何だまた婆さんかよ。ここは観光スポットじゃねえぞ。帰った帰った」
二人組の警官が現れた。
まさか近づく者を監視しているとか? それならご苦労なことだ。
確かに犯人は現場に戻ると言うがまさかね。
「これ以上邪魔すると逮捕するぞ」
「何言ってるんですか先輩。ダメですよ」
隣で必死に宥めている若い刑事。
静まり返った館に活気が戻ってくる。
「うるさい。いいんだよ。この婆さんが繰り返さないように教育してやるんだ。
ほら婆さん帰りな」
「何を抜かす若造が」
あーあ。また始まったよ。
「あれ後ろの方は…… 例の探偵さん。これは失礼。何か進展ありましたか?
ああん? おかしいな。探偵さんたちは捕まったって話だったんだけどな」
「うるさいね。あんたらに答える義務はないね。さあ行きましょう先生」
手を引かれる。子供じゃないんだけどな。
「こら婆さん。調子に乗るな」
ここで押し問答してる暇はない。できれば早く中に入りたい。
「すみません。急いでますのでそれでは」
「ほら鍵を開けな。先生の命令だよ」
「黙っていればつけ上がりやがって。
ここは俺たちが管理してるんだ。勝手は許さん」
あーあまた怒らせてしまった。できればもう少し穏便にできないだろうか。
助手としての腕は申し分ないがすぐに頭に血が上り喧嘩腰になるから困る。
トラブルが悪化するか長引くかのどちらかで良いことはない。
「こら小僧。早く開けるんだよ。時間が無いんだからさ」
確かにゆっくりしてる余裕は我々にはない。
しかしさっきまでのんびりソバをすすっていたので説得力が無い。
「無理だ。許可が無くてはどうにも。勝手に民間人を入れたら俺たちが叱られる」
彼らの立場も分かってやらなくては。ここは一旦戻るのがいいだろう。
これ以上の押し問答は時間の無駄でしかない。
「何だいそんなことかい。大丈夫あんたたちの親分から許可はもらっているよ」
また口から出任せを言う。あーあ困ったなあ。
「嘘を吐くな婆さん」
「嘘じゃないさ。確認したければ好きにしな。入らせてもらうよ」
さあ先生。と常に強引な大家さん。
まあこれくらいでないと探偵も助手も務まらないと言えなくもない。
お騒がせしましたと頭を下げ中へ。
まあ実際どっちもどっちなんだが……
さっそく儀式の間へ。
大家さんは無線を取り出すとボソボソ何か言っている。
どうやら合図を送っているらしい。
儀式の間の一番奥に控えるサライちゃん人形。
人形と言えば可愛らしいが置物でしかなくかなりの重量だ。
何キロあると言うのか。二人がかりでもびくともしない。
押しても引いてもダメらしく動かされた形跡はあるものの事件とは直接関係ない。
警察にそう判断されてしまった。
「先生。動かしてみましょう」
「また? どうせ動かないって」
サライちゃんを力いっぱい持ち上げようとするがやはりびくともしない。
前回と同様の結果。コツでもあるのか。
しかしコウ君はじめ皆否定する。ならば信じるしかないだろう。
ただ重すぎるが為に動かないのかそれとも何らかの仕掛けがあって動かないのか。
念のためもう一度大家と一緒に持ち上げようとするも失敗に終わる。
まあしょうがない。これも想定内だ。
次だ。次に行こう。切り替える。
大家は立ち上がらない。
これはまずい。腰を痛めたのか立ち上がれないでいる。
「いいよ。やっておくれ」
無線に指示を送る大家。
「ではそろそろ始めますかね。先生は見ていてください」
まったく訳が分からぬまま進んでいく。
一人だけ取り残された気分だ。
パチパチ
パチパチ
大家さんによるイリュージョンの始まり始まり。
続く




