名探偵と迷探偵
あと少しすれば皆地下牢から脱出できる。
だがそのちょっとした時間さえも耐えられない面々。
それもそのはず。何一つ聞かさていないのだから無理と言うもの。
屋敷じゅうバタバタで地下牢にまで関心が向かない。
もはや存在を忘れられている。
決して届くことのない叫びは虚しいばかり。
それでも文句を垂れ続ける五人。
空腹が人を獣に変え、より攻撃的になる。
「飯だ。飯をよこせ。早くしろ」
「うおー そうだそうだ早くしろ」
「ハリーアップキブミー 」
大合唱は止らない。
光が差し込む。再び姿を現した看守。
「飯は勝手に食え」
開口一番に囚人たちの神経を逆なでするようなことを言う。
「何だと」
「釈放だ。早く出ろ」
「あの…… どう言うことでしょう? 」
元の人間に戻る。
「いいから早く出ろ。順番に歩け」
有無を言わせない迫力。まあいいか。出れるのだし。
五人は地下牢を脱出。
「うおおおお」
「やった」
「ダンジョンはベリーベリーエキサイティング」
囚人たちは喜びを爆発させ抱き合う。
喜びの抱擁とちょっとしたハグ。
何日振りだろうか? 待ちに待ったシャバ。
誰か迎えに来てくれると嬉しいが…… まあ無理だろう。
閉じ込められたのは一日。
それでも物凄く長く感じた。
長いようで短い囚人生活。
再び元の世界へ。
村では外出禁止令が出ており従わざるを得ない。
宿泊場所の本部に戻ることに。
ふわーあ
たっぷり寝たつもりがどうやら睡眠不足のようで欠伸が止らない。
解放されて少々気が緩んだせいもあるだろうか。
一度伸びをして体を動かす。
それでも欠伸は止らない。どうしても眠気が収まらない。
騒がしかった隣の男も疲れたからもう寝ると言って別れた。
本部へ戻るとコウ君が言いづらそうに一言。
「自分は儀式の後片付けや今後のこともあるので出てきますね」
責任感の強い子だ。彼が一番疲れてるはずなのにまだ動き回ろうとする。
「ヒャア…… コウも大変だな…… 」
「ああ。しかしコウ君の疑いも完全に晴れたのだから良かったじゃないか」
助手はそうっすねと言って倒れ込む。
疲れたそうだ。私に比べればまだ若いと言うのにだらしがない。
注意するが聞く耳を持たない生意気な助手。
「おい。何をやってる」
「だって眠いんだもん」
減らず口を叩く。
「あれだけ地下牢でたっぷり寝たと言うのにまだ寝たりないのか」
「へへへ…… いいじゃないっすか」
笑うだけで決して真面目に答えようとはしない。
まったく困ったな……
助手は疲れたとしか言わなくなった。これは良くない兆候。
立ち上がろうともしない助手。だから…… いや止めておこう。
愚痴を言っても始まらない。
「ちょっと調べたいことがある。後は任せたぞ。
できればルーシーに張り付いていて欲しい」
「分かりました」
立ち上がり真剣な表情を見せる助手。
頼もしい限りだが……
その顔がいつまで続くか見ものだが生憎私にはそんな余裕はない。
第三の消失の詳細もまだ分かっていない。
あのゴリラのような刑事に話を聞くのもいいかもしれない。
「先生…… 先生」
部屋を出てすぐに私を呼ぶ声がする。
助手でないとすると……
「先生。先生。こっちです」
やっぱり。大家さんだ。
手招きする方に走る。
「どうしたんですか? 」
「静かに。誰にも気づかれずにこの建物を出ますよ」
「うーん。そうは言ってもな…… 」
「早くしてください」
大家が急かす。
一体何をそんなに焦っているのだろう? まあちょうどいいか。
近くのソバ屋に入る。
またそばか…… いい加減違うのが食べたいよ。飽きてしまった。
「先生。静かに。追い出されてしまいますよ」
「あれ聞こえた? 」
仕方なく名物の鶏ソバをすする。
改めて話を聞く頃合いだ。
「しかしなぜ大家さんが山湖村に? 」
偶然と片付けるには無理がある。
「先生がご招待してくださったのではないですか」
「うん…… そうだったけ? 」
記憶にはないがそうに違いない。
いきなり大家さんが現れた時はびっくりしたものだ。
「先生がお呼びになったのかと。私だって鶏ソバは食べ飽きてますよ」
「そうか…… 」
「まったく先生は変わりませんね。本当に見かけだけなんだから。
これでよく事件に関わってられますね。危なくて見てられない」
「小言はいい。本題に入ってくれ」
大家は周りを確認。
慎重に言葉を選んで語りだす。
「忘れ物を渡しに来たんですよ」
意味深な言葉をつぶやく。
忘れ物? 一体なんだと言うのか。
続く




