釈放
最後の扉を開ける。
儀式の間。
ついに恐れていた事態が……
三貴の姿があるにはあったが意識がない。
倒れていた? なぜ?
三度目の消失は起きなかった。
突入と同時に三貴の姿を発見。
果たして三貴の容体は?
ただ寝ているようにも見える。
だが儀式が今さっき終わったと言うのに出て来もせずに寝ている?
どう考えてもおかしい。
三貴の元へ。
「どうです? 」
「ダメみたいだ。呼びかけても返事が無い」
「まさか疲れて寝てるなんてありませんよね? 」
揺すってみるが反応がない。
やはりもうダメかもしれない。
「脈を診てくれ」
「分かりません」
「心臓は? 」
「分かりません…… 」
そう言って首を振る。
「ヘリだ。ヘリの手配を急げ」
三貴を急いで県内の総合病院に輸送する。
果たして間に合うのか?
残されたのはまたしても純白の衣のみ。
三度目の消失は何とか免れた。
謎が謎を呼んだ連続消失事件はついに途絶える。
だがその代償として三貴が犠牲になっては意味がない。
「衣の中に何かあるぞ」
部下たちが騒ぎ出した。
「おい見せてみろ」
「これです。毒物でしょうか? 」
ビンがありその中に錠剤が残されていた。
ついに遺留品が見つかる。
これまでまったくと言ってなかった貴重な手がかり。
「鑑定に回せ」
遺留品を回収。
現場検証に移る。
「どうしたんだい。何かあったのかい? 」
こんな忙しい時に婆さんの姿。大人しくしてろと言ったのに。
「ほら近づくな。一般人は立ち入り禁止。今は現場検証中だ。出て行ってくれ」
「ハイハイ。まったくうるさいね。答えたってバチは当たらないよ」
「三貴が倒れた。いいかこのことは他言無用だからな」
「そんなこと言って村人が黙っちゃいないよ」
「村人に言うな。探偵さんにも黙ってろ。絶体に誰にも言うな。分かったな? 」
「はあ…… そんなこと言ったって…… 」
婆さんも動揺が隠せない。俺もそうだ。
婆さんの話では消失など起きないはず。
とすると婆さんの情報も推理も当てにならない。
残念だが振り出しに戻ったという訳だ。
「いいから従え。もしどうしても言わざる得なくなったらその時はこう言うんだ」
婆さんには悪いが強く命令するしかない。放っておけば混乱を招くだけ。
「三度消失が起きたとな」
「分かったよ。従うさ。これも作戦の内だね? 」
「ああ。理解してくれたようだな。真犯人を追い詰めるには時間が必要だ。
時間稼ぎが真実につながる」
山湖村に再び激震が走る。
儀式は完成せずに当主は亡くなり、次期当主候補は次々に姿を消して行く。
闇は深まるばかり。
儀式を執り行っていた村長に一報が入る。
それは翌日の早朝のことであった。
村長と関係者によって今後のことが協議される。
村を事実上支配していた一族が次々と不幸に見舞われ村は機能停止に陥ってる。
この状況を打開すべく妙案が出された。
それは……
朝。
陽が差し込む。
日の光の届かない地下牢に囚われた五人は気付くこともなくぐっすりと……
いや一人だけ居ても立っても居られない者が目に隈を作り寝たふりをしている。
午前十時。
まだ朝食を持ってこないことに腹を立てた男が大声で叫び続ける。
「朝から騒々しいぞ。少しは静かにしろ」
「ふん。早く飯を寄越しやがれ」
汚く罵る男。
「そうだそうだ」
同調する奴ら。
「うるさい。少し待ってろ」
「早く早く。もう待てない」
よだれを垂らす檻の中の獣たち。
もはや人間の姿はなくただひたすら吠えるのみ。
一日や二日でこうも変わってしまうのか。
「うんうん。そうか分かった」
さっきから騒がしい見張りの者。何かあったのだろうか?
「何…… それは本当か? 」
「はい。間違いないようです」
「そうだな。確かに少なくても第三の消失には関わっていない。よし手続きを」
「あの食事はどうしましょう? 」
「知るか。喰いたい者には喰わせればいい。
本当は完全に疑いが晴れるまで地下牢に閉じ込めておきたいがそうもいかんだろ」
容疑者は第三の消失時、地下牢に居たと言う鉄壁なアリバイがある。
このままにしておく訳にはいかない。
村長の判断で無罪放免の五人。
地下では相変わらず飯の催促の大合唱。
探偵以下五名釈放へ。
手続きに入る。
釈放。
こうしてその日のうちにめでたく五人全員釈放される。
続く




