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突入 三貴の安否

うららかな春の日。


事件を忘れて桜を愛でるのも一興。


花びらが散る。


湖に沿って桜並木が広がっている。


天気のいい午後には満開の桜を楽しむのもいい。


夕暮れの桜もまた悪くない。幻想的で昔を思い出す。


もう間もなく夕暮れ。


桜と湖のコントラストにサンセットが新たな色を付ける。


この季節だけのお楽しみだ。


闇夜の花見も面白そうだ。


都会の桜とはまた違った楽しみ方がある。



陽が沈むと同時に雲が湧き出し不気味な空へ変わる。


お月さまは雲に隠れ姿を見せない。


ふう、それにしても肌寒いね。こんなところ一分でも早く立ち去りたいよ。


ソメイヨシノが満開となり幻想的な雰囲気を作り出している。


とは言え外はもう限界。建物の中に入って茶を啜る方が断然いいに決まってる。


うん間違いない。


そろそろ移動するかね。


湖を離れ北の館へ。



三女の三貴が儀式を終え姿を現す。その時間が近づいてきた。


日付が変わる頃。


それまではどんなことがあろうとも中に入ってはいけない。


それが決まり。


まるで鶴の恩返し。


つうの言い付けを守らず障子を開けると機織りをする鶴の姿が。


ここでは三貴が三日三晩飲み食いせず閉じ籠る。


障子を開ければ三貴のあられもない姿が見えるか。


不気味なサライちゃん人形に吸い込まれていく最後が見れるかもしれない。


そうなったらもうホラー。


打つ手なし。逃げ帰るのみ。



北の館での儀式を終えると次は中央の館で翌日一杯まで籠り儀式が完了。


ようやく当主が決定する。


果たしてそれまでに候補者は生き残ってられるだろうか?


長女が失踪し二女が血痕を残し姿を消す。


二人の生死は今のところ不明。望みは薄く絶望的だ。


三貴さんだけでも生き残って欲しいと願うのは村人たちの共通の想いである。



その村人と言えば……

 

大人しいものである。外出禁止令が出されていることもあり人っ子一人いない。


女の一人歩き特に夜道は危険が伴うが構うものか。私には確信がある。


犯人は決して私を襲えない。襲うことなど不可能。


なぜなら真犯人は囚われの身。身動き一つ取れないからだ。


そう私の推理が正しければ間違いなく犯人はあの人だ。


まだ動機が解明されていない。だからもちろん完全ではない。


しかし我々に挑戦状を送り付け村を混乱に陥れた第一村人はあの人に違いない。


もちろん他の可能性も考えられる。気を引き締めてかかるべきだろう。


さあ囚われの第一村人に反撃開始だ。



午後十一時を大きく回った。


もう次の日も目前。


もし今日が大晦日ならそろそろあけましてが来る頃だ。


館に黒い人だかりが見える。


ご苦労なこと。


彼らは彼らなりに真相に近づいてきているのだろう。


先生の助言と私の的確なアドバイスで真犯人に辿り着いたか。


それにしても第一村人はどのように消失させる気なのか。


どう頑張っても手も足も出せない。


そうしてる間に時間切れになり無事姿を現す。


計画は失敗に終わる?


そろそろタイムリミットだ。



日付が変わって五分が経過。重苦しい空気が漂っている。


ついに館の周りを囲む警察隊に動きがあった。


騒ぎ始め無線連絡をしている。


「A班はどうだ? 」


「動きはありません」


「B班は待機。C班は突入準備」


「了解」


「あと一分待て。俺の指示で突入だ」



「あら刑事さんこんばんわ。私も見学に来ましたよ。


どうです館の方は? 異常はありませんか? 」


「まったく…… 物好きな婆さんだ。本当は民間人は立ち去ってもらいたいがな。


あんたには借りがあるからな。いいか? 大人しくしてるんだぞ」


「はい言われなくても。もう私には何もすることもありませんしね刑事さん。


後は見守るのみです。高みの見物って奴ですよ」


「ほう。随分余裕だな。まあいいや。じゃあ行ってくるぜ婆さん」


「どうぞお好きに」


「ふん。よし時間だ。突入しろ。突入」


儀式終了時刻はとうに過ぎている。これで文句あるまい。



警官隊が雪崩れ込む。


「三貴さん」


「ご無事ですか? 」


「返事を。返事をお願いします」


「おーい。おーい」


「三貴さん」


刑事はついに最後の扉に手をかける。


                   続く

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