史上最大級の忘れ物
さあすべての真実を白日のもとへ。
「実はなあ…… 」
「何だって…… それじゃあ…… 」
「ああ。そうだ。たぶん間違いない」
「そ…… そんな…… 先生が…… 」
「慌てるな。慎重に事を運べ。奴とて我らの仲間なのじゃからな」
「仲間? 呆れた…… 」
もはや返す言葉もない。
「だってそうじゃろ。奴も仲間。第一村人なのだからな」
衝撃の真実に言葉を失う。
まあ探偵業を長くやらせてもらったけどここまでの衝撃は無かった。
腰を抜かし立ち上がることさえできない。
早く知らせなくては。
でも一体誰に? いや本当に知らせていいの?
このままこの爺さんのように目を瞑るれば誰も傷つかない。
私だってできるなら……
しかしすべてを知った今解決しない訳にはいかない。
元探偵としてのプライドもある。
警察の二文字が浮かぶ。
元村長と別れて駐在所へ。
あらら……
飲み食いせず歩き回ったせいで力が。
体力の限界だ。とりあえず腹ごしらえが先だ。
随分遅いお昼を頂くことに。
鶏ソバをすする。
あちちち……
急ぐあまり舌を痛める。
猫舌にセッカチは禁物。
だができるだけ急がなくてはダメだ。
うん。これで元気一杯さ。
駐在所へ。
はあはあ
はあはあ
「何だ何だこの婆さん? 俺は呼んだ覚えがないぞ」
目の前にはゴリラみたいな見た目でやはり言葉が悪く威圧する男。
昼間の刑事に似ている。
こいつら人でも食う気か? 善良な市民を恐怖に陥れる田舎の刑事。
「あんたがこの事件の責任者かい? 」
何かを悟ったのかため息を吐く。
「済まないなあ。でもあんたのお孫さんはまだ返せないのよ」
「はあ? 何の話だい? 」
「あれ違った。じゃあ爺さんか? まあどの道もう少しかかるんだわ。済まない」
丁寧に頭を下げる刑事。
やる気があるんだか無いんだか。頼れるんだか頼れないんだか。
「違う。私はこの村の人間じゃないよ」
「はあ? だとしたらお引き取り願いましょうか」
不機嫌な顔をしてこちらを睨みつける態度。まったくどいつもこいつも。
年上を少しは敬えってんだよまったくもう。
「いや今回の連続失踪事件の謎が解けたので知らせに」
「はあ重症だ。よし俺が暇になったら聞いてやる。
一か月後にでも110番に掛けてくれ。それじゃあな」
案の定相手にしようとしない。まあ当然と言えば当然か。
ただの老女では説得力が無い。
「ふざけるな。市民を馬鹿にするな」
ついに切れてしまう。
「何だと。今は忙しいってのに。村人以外は入ってくるな。目障りだ」
イライラの限界のようで喧嘩腰になる。
「お待ち下され。話を聞いてはいかがかな」
温厚で聞く耳を持つ駐在が宥める。
「だってよう。この婆さん。暇だからってからかってるんだぜきっと」
「ふざけないでおくれよ。私はただ忘れ物を届けに来たんですよ。
ねえそこの刑事さん私の先生はお邪魔していませんか? 」
「先生? あんたもしかしてあの探偵さんの知り合いか?
そういや昼に変な婆さんがいるって報告が入ってたな。まさか関係あるのか? 」
「ふん。あんたには関係ないよ」
「探偵さんは本部だ。さっきまで居たんだが戻ったようだぜ。
用が済んだらさっさと出て行ってくれ婆さん」
そそくさと出て行こうとするが……
「待てよ婆さん」
止められる。出て行けと言ったり待てと言ったり。一体何の用があるのだろう。
「これは忠告だ。まだ連続殺人と決まった訳ではない。
死体はまだだ。余計なこと言い触らされては困る。それから忘れ物とは何だ? 」
「それはこの事件の真相さ。動機以外すべて解けたよ。
まあ動機などあってないような物。本人に直接問いただせば吐くでしょう」
「何を言ってやがる…… 冗談じゃなかったのか? まさか本気? 」
「さっきからそう言ってるだろ。それよりも先生は元のところに戻ったんだね。
急ぐんだ。失礼するよ」
婆さんは外へ。
刑事は唖然とする。
「真相が。真実が分かったって言うのか? 」
「そのようですね。どうします? 」
「あの婆さんを捕まえろ。呼び戻して知っていることを洗いざらい吐かせろ」
駐在は急いで追いかけるが……
「駄目です。もうどこにも」
「フン。逃げ足の速いホラ吹き婆さんめ」
その時連絡が入る。
続く




