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スープは、人参とキャベツの千切りを、牛ストックで煮込んだもの。サラダはくだものを角切りにしてヨーグルトで和えた、アムブロシアみたいなやつ。
それに、ご飯を炊いた。ステーキとご飯はあうよな。おいしいです絶対。
ホースラディッシュをすりおろしたものと、お醤油、突貫でつくったハニーマスタードを小皿に用意して、トレイにのせる。好みでつけて食べる為だ。
味見名目で、ステーキをちょこっと食べた。ちょこっと。まあ、三口くらい。旨い。
食堂へワゴンを押していく。「晩ご飯できましたよー」
五人は手を停めて顔を上げ、目を耀かせた。
「なにそれ、うっまそお!」
「レミアン、休憩にしましょうよ」
リアムくんルネくんが、トレイを並べるのを手伝ってくれる。手をとりあって跳ねているのが可愛い。
レミアンさんは首をぱきぱきいわせた。「解った、休憩しよう。いい加減目がかすんできた。ヴァッセに来てもらうか?」
「呼び出しかけましょうか」
いちはやく席に着いたサニエルくんが耳を押さえて云う。レミアンさんは頭を振った。
「や、あいつも忙しいだろうから」
「あの子、グークマの邸を調べてるんだったかしら?」
リアムくんとルネくんが座り、レミアンさんとジャヤさんも、食事の為のテーブルに移動してきた。
「いや」レミアンさんはツァリアスさんが淹れたお茶を飲む。「祇畏士さまの」
「ああ、成程ね。ケルシエ・グークマはそちらに居た、と」
「祇畏士さまだからな。しかし、祇畏士さまがあんなことに手を出すとは、世も末だ」
レミアンさんが背凭れに体をあずけ、天井を仰いだ。
厨房へ戻って、みんなと晩ご飯だ。ステーキはおいしいし、ご飯はつやつやに炊き上がっていて、最高。人参もあるし。
「それにしても、祇畏士さまが人攫いなんてねえ」
リエナさんは呆れ顔だ。すでに噂はひろまっていて、お肉を買いに来たお客さんからも聴いたそう。「昨日聴いた時も驚いたけれど、ひと晩経っても信じられない」
「祇畏士さまなら、そんなことしなくてもいいですよね。尊敬される、素晴らしい職業なのに」
「尊敬されても大金は手にはいりません。エンバーダート家に対抗するにはお金が要ると、勘違いしたのでしょう……」
グロッシェさんはアムブロシアをお皿にとりわける。リエナさんがステーキにフォークをぶっ刺した。
「勘違いですよねほんと。ミューがジーナを大切にするのは、お金に目が眩んだからじゃないわ」
そっか、エンバーダート家は資金力が凄いらしいから、それに張り合いたかったんだな。なら、領地があるのだし、そこを発展させて儲ければよかったのに。
そんなふうに思えるひとなら、犯罪で稼ごうとはしないか。ばかだなあ。




