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それにしても、捕まったひとのこととか、供述内容とか、俺に喋っちゃっていいものなんだろうか。
ツィークくんが喋っても、五人も、傭兵協会に所属しているサッディレくんも、停めはしない。別に、規約違反ではないのかなあ。
「あ」お茶のおかわりをいれてくれたサッディレくんを仰ぐ。「サッディレくん、今日はここに居るの?」
「うん?ああ、魔物討伐のことなら心配ないよ。マオのことがあるから、俺とアーレンセは免除されてるっす。巡回もしばらくは免除」
「そうなんだ」
「セロベルさんもはやく戻ればいいのに」
サッディレくんはぷくーっとふくれた。「マオがさらわれたって知ってたら、飛んで帰ってきてたよ、きっと」
それはどうだろう。……セロベルさんは優しいから、そうかもなあ。
「来てくれるかもしれないけど、あんまり迷惑はかけたくないなあ」
「迷惑なんて思わないよきっと」
やけにいい募るサッディレくんを、ツィークくんは前髪をすかして胡乱そうに見ていた。
ツィークくんは本部で仕事があるから帰るらしいので、お菓子を沢山持たせた。サッディレくんが仏頂面になっている。ツィークくんは嬉しそうだった。
「これでライティエさんに殺されないですみますよお」
「あ、泊まりのお客さんのご飯も用意してなかったや、俺」
「あなたっておかしなひとですね」
ツィークくんがお菓子の包みを懐へいれる。収納空間だけでなく、なるたけ持って行こうとしている。「ライティエさん達だって、昨日の今日でマオさんにご飯をつくらせようなんて思いませんよ」
「えー、でも、ご飯つくるくらいはいつでもできるよ」
ひょいひょいと、パウンドケーキの包みを出した。オレンジのシロップを染みこませたものや、いちごのジャムを混ぜ込んだものなど、色々。
全部まとめてツィークくんに押しつけた。「これはツィークくんのね」
「は」
「ほかのひとに食べさせちゃだめだから。絶対全部ツィークくんが食べて」
みんな俺を気遣ってくれるが、ツィークくんだって拉致監禁されていたのだ。殴られて気絶させられ、気がついたら拘束されてずだ袋のなかである。恐怖以外のなにものでもない。傭兵だから修羅場を潜ってきてはいるのだろうけれども、だからって恐怖が和らぎはしないと思う。お菓子を沢山食べさせてあげるくらいしないと、幾らなんでも可哀相である。
「俺の気持ちがこもってるからね!」
ツィークくんの手を握ってそう云うと、ツィークくんは赤面して、凄くいやそうに俺の手を振り払った。「意味が解りませんよお」
「そのままだけど?」
「だから俺は……あ、もういいですう。解りました。マオさんのことだから、そういうことじゃありませんよね?」
どういう意味か解らなかったけれど、ツィークくんはひとり納得して、パウンドケーキの包みを両手に抱え、出て行った。




