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だと思う。ツィークくんの話してくれた特徴がぴったりだったから。
ジーナちゃんが四月の雨亭に居ると聴いてさぐりをいれてたとか、ジーナちゃんが邪魔だからマイファレットに協力してさらったとか、供述しているらしい。
この世界には、電話もインターネットもない。が、伝糸がある。
マイファレット家・グークマ家の所業は、祇畏士を通じて即座に本国へ伝えられた。伝糸は数珠つなぎにすれば、どこまでだって情報を伝えられる。本国からの折り返しがあったのが昨夜遅くで、その内容は傭兵協会にも報せられ、今朝になってツィークくん達もそれを聴いた。
「マイファレット、グークマともに、領地及びディファーズ内にある財産はすべて没収。ディファーズに居るマイファレット家グークマ家の者は、女性と十歳以下以外の全員が一旦拘留されて事件との関与を調べられています-。女性と十歳以下は、廟に預けられたみたいですねえ」
子どもは無関係だろうから、罰せられないといいな。親が悪いことしてるなんて普通考えつかないことだ。知っていたとしたって、子どもじゃどうしようもないし。
けど、女性が排除されてるのはどうしてなんだろう。何人か関わっていたっておかしくないと思うんだけれど。
デザートのクッキーをぽりぽり食べながら訊いてみた。「女性がお咎めなしなのは、どうしてなんですか?」
「ディファーズは女性にほとんど権利がないから」
レミアンさんがスープをすすった。「仕事だって下働きか子守りがいいところなのに、人攫いの計画には関われまいと判断したんだろう。仮に女性が取引の場にあらわれたとしたら、ディファーズ出身者はばかにされたと怒って帰るだろうし」
そこまで男女の権利に差があるのか。
じゃあ、マイファレット嬢も大丈夫かなあ。頭が残念な子だけど、悪い子かどうかでいったらそこまででもない気がするんだよな。
クッキーがなくなりそうなので、収納空間から出して補充した。収納空間から次々出てくるクッキーやお菓子の包みに、ルネくんとサニエルくんが目をまるくする。ツィークくんがテーブルに片肘をついた。
「これくらいで吃驚してたら、身がもたないよお、ルネ、サニエル?」
「ツィークくん、パウンドケーキ好きでしょ?はい」
ツィークくんにパウンドケーキの包みをあげる。お茶のおかわりをいれていたサッディレくんが、ちょっと棘のある声でツィークくんにお茶をすすめた。「あたたかいうちにどうぞ」
「ツィークくん、グークマも閉門ってことでいいの」
「当然です。ディファーズでは人攫いは重罪なんですから。それを枢機卿がやってたなんて、とんでもない醜聞ですよお?神聖公は容赦する訳ないです。示しがつきませんもん」




