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俺も席について、サンドウィッチを食べはじめる。旨ーい。れんこんのしゃくしゃくもじゃがいものほくほくも最高。生地も巧くいってる。
ツィークくんもぱくぱく食べている。結構食べるんだよな、この子。「ツィークくん、ついてる」
粒マスタードが顎に垂れていたので、指で拭おうとしたら、ツィークくんはのけぞって避けた。何故。
手巾をとりだしてささっと拭いている。俺は首を傾げた。「拭いてあげたのに」
「いりませんっ」
「えー、でも」
「ああもう。そうだあ、昨日マイファレット家のことを気にしてましたよね?マオさん」
頷く。ツィークくんは云う。「今朝、上から通達がありまして、マイファレット家は正式に領地を没収されました。詰まり、閉門です」
昨日の午后、マイファレット裾野邸とその隣の廟に警邏隊がはいった。廟まで?と思ったけれど、マイファレット家はあの廟に、人身売買で儲けたお金の一部を隠していたらしい。そういうものが押収された訳。
マイファレット邸には勿論、人身売買で儲けたお金がうなるほど眠っていて、宝飾品や美術品もざくざく出てきた。イヴァーノウェチの描いた蛙の絵があったんですよとその件だけツィークくんはちょっと声を高くした。有名な画家らしい。
で、そんなもの残しておかなきゃいいのに、帳簿もあった。さらって売り払った女性達の個人情報と、売値が書いてあったそう。残しておくなよ間抜けだなあと思ったけれど、多分、連続して同じところでさらったら流石に民衆の不安と不満が募る、と考えてたんじゃないだろうか。実際、女性達のさらわれた場所はばらけているのだとか。
首謀者はマイファレット卿の弟で、警邏隊が踏み込んできた時にマイファレット卿と心中を図った。けれど失敗して、ふたりともお縄を頂戴した。長男(昨日ミューくんに脅されて腰を抜かしていたひと)と、三男四男も、関与していたとして捕まった。マイファレット夫人とマイファレット嬢は突然の事態に茫然自失で、まったくなにも理解できておらず、病気で衰弱している次男とともに、現在隣の廟に預けられている。客分として逗留中だったファバーシウス家は、宿に移ったみたいだ。グークマ家に移ろうとしたけど無理だったのだそう。グークマにも警邏隊が調べにはいったからね。
そう。グークマも、やっぱり人攫いに関わっていた。マイファレット程派手にではないけれど、マイファレットよりも昔から。グークマ経由でマイファレットも人攫いをするようになった、みたい。
で、吃驚なんだけれど、グークマ家の祇畏士が関わっていた。いつか、ほーじくんを迎えに来たひと達のなかに居た、角持ちのひと。




