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リッターくんの腕から降りてユラちゃんへ挨拶しているロヴィオダーリ卿を見て、啞然とする俺に、ツィークくんが近付いてきた。何故かリーニくんが一緒だ。「マオ、なにしてるの?吃驚したよ」
「マオさん、元気そうですねぇ?」
「……あ、なんか、心配かけたみたいで」
「ほんとですよお」ツィークくんは恨めしそうに腰に佩いた剣を示す。「刃毀れしちゃうし……ついてないなあ」
リオちゃんの一撃は相当重かったみたいだ。俺は苦笑いで、ふたりへパンをさしだす。「おなかすいてない?」
「マオらしいや」リーニくんがくすくすした。「もらっていいの?」
「勿論」
「……戴きます」
ツィークくんとリーニくんはパンをうけとって、食べながらざっと説明してくれた。
昨夜、ツィークくんは六人と別れ、さらわれた女性達を連れて一番近くの警邏隊詰め所に飛び込んだ。そこで、ディファーズの言葉が解る警邏隊員に女性達を任せ、ツィークくんは本部へ移動。書類仕事で集まっていた傭兵達に事情を説明し、ロヴィオダーリ、エンバーダート、ファバーシウス、レフオーブルに知らせた。ツィークくんが把握できた名字がそのよっつだったから、みたい。
それから隊を編成し、ラッツァク所有の不動産など、怪しい場所を片端から調べた。途中、ユラちゃんの侍女や、ジーナちゃんの侍女、リッターくんの家のひとなんかが合流。ファバーシウスからも来たけれど、別の隊と一緒に行動している。ユラちゃんやジーナちゃんの侍女は、数が多いので、分散した。
で、トーリュス邸あとに来てみたら、前庭で娼妓と覚しい少年達が不安げにたむろしている。ツィークくんの姿をみとめて、ひとりが走ってきた。それがリーニくん。
リーニくんが、昨夜賭場で騒動があって逃げたけど、心配で今日ははやめに来た、そしたら扉は還元されてなくなっているし、なかからマオと叫ぶ声がした、とツィークくんに訴えた。リーニくんは、俺がリッターくんとこそこそ相談していたこと、俺達が這入っていった奥の部屋のほうから爆発音がしたこと、などから、俺が厄介ごとにまきこまれたのではないかと心配してくれていたらしい。逃げる時にマオの姿がなかったしね、とリーニくんは小首を傾げた。
そこで、ツィークくんの判断で突入。リーニくんは、内部の構造を多少知っている、ということで、道案内にたった。
這入ってみると、いつもは居る生き証人や、武装した給仕の姿もない。しかも、一部のテーブルが倒れていたり、酒壜が割れていたりと、明らかに戦闘の痕跡があった。そこで、戦闘ができる状態で奥へとおしいると、俺達が暢気にお食事していた、というわけ。




