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彼はサフェくんをちょっと見て、迷うような表情を見せた末に、云った。
「どなたかが強硬に主張したらしい。そんなことをしている間に、御山に害をなすかもしれないと。それで、はやくに手を打つことになった。よいことははやくやり、あしきことはさけよと、そういうことだ」
サフェくんは眉を寄せている。金髪くんは苦々しげに続ける。
「俺を睨むな。俺の決めたことじゃない。よいこととも思っていないさ。だからこうしている」
「わかってる。君を責めてはない。ありがたいとも思ってて……でもマオは、これまで、お役に立ってきたんだよ。お世話になった先生だって居るのに、こんなの酷いじゃない。その気持ちは、わかってくれないの」
それこそ、金髪くんに云ったって仕方のないことなのだが、サフェくんも怒っているのだ。俺のことを心配してくれているし、これまで信頼していた御山が無茶な判断をしたことにも腹を立てている。だから、縁もゆかりもなく、味方してくれている金髪くんに対して、らしくなくこんなことを云ってしまっている。
金髪くんは穏やかな声を出す。
「俺は理不尽だと思ったからこうしてる。だが、先生がたのお気持ちも、わからんではない。それとこれとは別だ、ということさ。お前、窮地を救ってくれた友達に金を奪われたら、そいつをゆるすか? そいつが金を奪うかもしれないと思ったら、お前は先んじてそいつを罰するか?」
「……どういうこと」
ひょいとこちらを示し、彼は続ける。俺は彼にマグをさしだした。彼は話しながらうけとる。
「こいつは立派なやつなんだろ。俺だって話を聴いたことがある。荷運びで活躍しているらしいとか、魔物が這入りこんだ時にも、体力もないのに魔力薬を配ってまわったとか、ご令嬢の命を救ったとか。それだけのことをしているから罪がゆるされるっていうのは、おかしな話だってことだ。それが御山の考え」
彼はひと口お水を飲む。
「だが俺は、罪を犯す前になにかしでかすかもしれないからと罰を与えるのはおかしな話だと思っている。してもいないことで罰することは、誰にもできない。何故って、起こってもいない。それは、鍋に水を注ぎもせずに火にかけて、いつか水がはいってくる筈だと思うようなものだ。火にかけられた鍋はいつか割れてしまう。道理だ。ではこれはどうか? これをおしとおせば、結局のところ御山にしっぺ返しが来る。鍋のように割れてしまうだろう。それが道理だ。俺はそう考える。だが先生がたは、起こるかもしれないことを未然に防ぎたい。その違いだよ」




