6839
そこから更に三十分ほど歩き、サフェくんが転んでしまった。それも、酷く。「サフェくん」
思わず大きな声が出そうになったが、なんとかこらえた。数回地面の上でごろごろと転がったサフェくんは、上体を起こして笑みをうかべ、両手をつく。
「だ……だいじょうぶ」
立ち上がったけれど、ふらついていた。結局、尻餅をつくように座り込んでしまう。金髪くんが駈け寄って、サフェくんが倒れるのを阻止した。この辺は石がごろごろしている。あのまま仰のけに倒れていたら、後頭部を酷く打ちつけたかもしれない。
「ありがと」
「……おい、お前、怪我してるんじゃないか」
金髪くんが険しい顔で、サフェくんの膝の辺りに触れた。ずぼんに異常はないが、金髪くんは顔を更に険しくした。「熱い」
「サフェくん、傷薬」
駈け寄っていって、傍に膝をつく。サフェくんの脛の辺りに触れる。熱さはわからなかったが、腫れているのはわかった。ちょっと考え、俺はサフェくんのくつをぬがしにかかる。
紐を解いてひっぱったが、駄目だった。くつが動かない。くつもぬげないくらいに、足が腫れているのだ。そこまで、無理をさせてしまった。
仕方ないので、とりだした傷薬は、膝下に振りかけた。ずぼん越しだが、このつかいかたでもきく筈である。患部に直にかけるのが条件ではない。戦闘中に鎧越しに打撲傷を負って、鎧をぬぐ時間がなくて癒しの魔法や傷薬を仕えないなんて話は、聴いたことがない。
傷薬の壜一本分、ふりかけた。からっぽになった壜を収納する。もう一本とりだしたが、サフェくんに手で制される。
「ありがとう。もう大丈夫」
サフェくんはそういうが、顔色が悪いし、声に力がない。なにより、足の腫れが完全にはひいていない。くつを動かすことこそできたが、ひっぱってもぬけない。「大丈夫に見えないよ。くつもぬげない」
「ぬがなくていい。歩くんだから」
「サフェくん、無理しても意味ないよ。この足じゃあ、移動に凄く時間がかかる」
「でも」
「休むぞ」
金髪くんが云う。「俺もつかれた。休憩をとりたい。足も痛いから、傷薬が必要だ」
サフェくんは頭を振ったが、俺は賛成した。
「そうだね。水分とろう。魔力薬と傷薬も、まだ沢山あるから、遠慮せずに云って」
金髪くんは、ほっとしたみたいに頷く。サフェくんは泣きそうな顔だった。一刻もはやく、少しでもルーレウさん達から距離をとりたいのだろう。だが、この足では歩けない。




