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彼はありがたそうに両手で杖を持ち、深く頷いた。「ありがとう、マオ」
「ううん。魔物が来ちゃったら、俺、役立たずだから」
冒瀆魔法はみんなの前ではつかえないし、駆使魔法は使役みたいに魔物を遙か彼方からでもすぐに呼び寄せることはできないようだから、それも無理。彼らに戦ってもらうしかない。俺は支援員だ。魔力薬を渡したり、傷薬をぶっかけたりする係ってこと。彼らが全員気を失ったら戦えるけれど……その展開はもうごめんだった。絶対にいや。無理。
ルーレウさんがちゃんと武装していたのを見て、サフェくんにも武器を持っていてもらおうと思った。魔物の不意打ちにも備えられるように。俺もなにか持つべきなのだろうが、それほどの体力さえない。まあ、不意打ちで気絶さえしなければ、収納しているお薬で恢復できるし、できないものはできない。武器は持たないことにする。
サフェくんにはいいずぼんをかすことができたし、武器も渡せた。これで、もっと安心できる。警邏隊はお仕事をまっとうする。俺をきらっていようが、どうだろうが、荷運びがうまくいかなかったら叱責されるのは自分もなのだから、ちゃんとまもってくれるだろう。
そう思ったのに、またあの、なんか妙だな、という不安がもたげてくる。馬車にはのれない、と聴いた。レントを出るとも。でも、ルーレウさんは行き先も、目的も云わなかった。どこのなんとか先生に持っていくとか、なんちゃら卿に渡すとか、そういう話をしなかった。それはやっぱり、俺の目には妙なこととうつって……。
「それ、武器だって、黙っておいて」
不安のまま口にする。サフェくんは数秒、俺を見詰めたが、小さく頷いた。「わかった。……歩き易いように、杖を持つのは、長旅ならあることだから、安心してね」
俺がこちらの世界のあれやこれやを知らない、ということを思い出したか、彼はうっすら笑って、そう云ってくれた。俺の不安の原因にも気付いているのかもしれない。サフェくんだって、荷運び仕事は幾らもしてきたのだから、今回がなんだか普通とは違う、ということもわかっている。
俺達は目を合わせ、どちらともなく頷き合う。サフェくんが俺の腕に自分の腕をまわした。俺達はお部屋を出て、また、寮舎の裏手へ向かう。「マオ、成る丈、一緒に居ようね」
サフェくんが云ってくれて、ありがたかった。俺だってそういう気分だったから。




