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「上に戻ったあと、少しくらい話せるかと思ったんだけど、ランス、ズフダリフ先生に呼ばれて行ってしまって」
「ズフダリフ先生と?」
さっきも、見たな、それ。
サフェくんは頷く。「なにかお話があるみたいで、教員寮まで来なさいって。彼女なんだか不服そうだったけど、ついていった」
「不服」
「ここじゃ話せないんですかって云ってたし、なんだか渋々って感じで。警護班のお仕事が気になったみたい」
「ああ」
ランスさんらしいかもしれない。彼女、凄く真面目だから、指示されてやっていたことを途中で投げ出すようでいやだったのだろう。緊急性の高いお仕事ならともかく、ちょっと話があるから来なさいっていうのは、ねえ。気持ちはわかる。
「なんだろうって、僕、気になってて」
「さっきも、見たよ」
「え?」
「ズフダリフ先生と一緒だった。あと、ええと、ルーレウさん、ファラワさん、あとガラ先生も」
「へえ。……めずらしいとりあわせ」
サフェくんも俺と同じ感想を抱いたらしい。俺は頷いて、その時考えたことを口にしてみる。
「騎馬武者になる学生さんが居て、そのことで呼ばれたのかなって、俺は思ったけど」
「ありそうだね。今の一年生は、適職を奉公人に明かさないかたが多いから」
そうだ。名簿に、適職、それに志望の職が書かれていないかたが、結構いらっしゃる。決めていないのじゃなく、奉公人に知られたくないとか、特定の先生にだけしか明かさないとかでもそこが空欄になることはあるので、案外多いのだ。
ってことは、そのなかのどなたかが騎馬武者を志望しており、ランスさんがその指導だか、能力を見る為の比較対象だかに選ばれるというのは、あるかもしれない。
反対に、それ以外の理由でランスさんが、補助教員達や奉公人でもそれなりに歴の長いファラワさんと一緒に行動するとか、教員寮に呼ばれるって、考えにくかった。
彼女が能力が低いとか、そういう話ではない。ただ、俺のように収納空間がある訳ではなく、ジャーラムくん達みたいに駆使魔法に関する特殊能力がある訳でもない。優秀だけれど、なんていうかな……ニュートラル? スタンダード? とにかく、かわった特殊能力を持っているひとではないのだ。俺が知っている限り。
騎馬武者だっていう理由以外で呼ばれるとしたらそれはもう、なにかの注意か、俺みたいに疑いがあってしばらく見張られるとか、そういうのしかない。ランスさんは俺と違って真面目だし、隠しごとも少ないので、なにかを疑われるなんてことはまずあるまい。




