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これくらい、ではない。ぴかぴかになった食器が積み上がっている。で、それをディロさんが乾かしてくれていた。ほんとに助かるけど、やっぱり業務の範囲外で、これって労働環境的にはよくはない。
「ディロさん、ありがとう」
「いいよぉ」
申し訳なく思いつつも、汚れたマグやからっぽのお鍋などを収納空間から出した。タイティーダさんがにこにこして、それを洗いにかかる。ディロさんは乾いた食器を積み重ね、運んでいって、棚へ仕舞いこむ。くるっと振り向いて、子どもっぽい笑顔になった。
「ねえマオちゃん、お礼のかわりに、たまご料理してくれない?」
「いいですけど。どんな料理ですか」
「あの、チーズがはいってる……」
「オムレツ?」
「そう、それ。食べたいな。お願い」
手を合わされた。他人に弱みを見せたがらないところのあるディロさんに、素直に頼みごとをされるのは嬉しい。俺は袖まくりし、平鍋を手にとった。
ディロさんがタイティーダさんを仰ぐ。「タイティーダも、食べる?」
「もらっていいんなら」
彼女は肩をすくめた。「ほんというと、はらぺこだったの。朝飯、まだだったから」
たまごはひとりあたりみっつ。白身を切るようにまぜてから、お塩と胡椒で軽く味を付け、ミルクでちょっとひきのばす。熱して油をしいた平鍋にいれたら、かきまぜつつ火を通す。すりおろしたチーズと刻んだパセリをたっぷり、まんなか辺りにおいて、木の葉型に整える。チーズに塩気が結構あるので、卵液にいれるお塩は少なめにしておいた。
焼き上がったのを、ぽんとお皿へうつした。ふたりは食器を洗い終えて、ルクトくんが用意してくれたパンとスープを前に、オムレツを待っている。
「大きくなりましたけど。わけてくださいね」
でっかいほうがつくりやすいので、そうしてしまった。彼女達は俺の無精になど気付かず、ぱっと表情を明るくする。
「うわー、ほんとにおっきい。おいしそう!」
お皿を置くと、ディロさんがさっそく、お匙でまんなか辺りを切った。とろっとチーズが伸びる。スライスされたパンにのせて、タイティーダさんへさしだすと、彼女はそれをうけとってかじった。「わ、うまい」
「口にあったなら、よかった」
「あ、パセリたっぷりだね。これ、おいしい」
ディロさんもパンにオムレツをのせ、頬張っていた。俺は平鍋を示す。「おかわり、できますよ」
「つくっといてくれる?」
タイティーダさんはにっこりする。「すぐになくなりそう」
「はい」




