表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6944/6949

6787


 また、たまごを割って、卵液をつくった。食糧保管室を見たが、たまごがいっぱいだ。誰かの要望があったのか、還元のあれやこれやで手にはいったのか、近場の農家さんがいっぱい運んできたのか。とにかく、ありがたい。オムレツに限らず、たまご料理は融通が利く。

 ディロさんがオムレツを食べながら、楽しげにタイティーダさんに話していた。「それでね、チヒロさまが、おいしい荒れ地菓子をつくってくださったの。勿論、わたし達にじゃないんだけれど、お相伴にあずかったからほんとに幸運だった」

「よかったね。わたしも、チヒロさまにはパンを戴いたことがあるよ。洗濯場にさしいれをしてくだすって」

「チヒロさま、お菓子もパンもお上手だよね。香辛料のきいた、トマトのパンがおいしくて、わたしも大好きなの」

 ルクトくんが大きなお鍋を火から下ろし、魔法でひやしているのを見ながら、卵液を平鍋へ流し込んだ。あれはストックだ。もう片方の大きなお鍋には、さっきベシャメルソースが追加されている。お(ひる)はシチューらしい。とりを焼きにかかっているから、あれを解していれるんだろうな。パンは仕込んであるし、パスタもあったと思う。パンでもパスタでもおいしいよなあ、シチュー。おかわりしよ、絶対。

 平鍋の中身をかきまぜていたら、班長がやってきた。警護班ふたりと一緒に。


「マオ、荷運びをしてもらう。裏へ来なさい」

 ルクトくんが、お鍋の前から、こちらへ移動する。俺はきょとんとしていた。荷運び、と、頭のなかで単語が踊っている。班長にこんなふうに話をされたのは、いつ以来だろうか。

 班長は云うだけ云って、すぐに出て行く。とりまきも一緒にだ。

 卵液が平鍋のなかで、じゅうじゅういっている。ディロさんがごくんと口のなかのものを飲み込み、呆れたみたいに云った。「なに……あれ」

「はやく来るように」

 警護班がひとり戻ってきて、むっとしたみたいに云い、またすぐ出て行った。ディロさんの唖然とした顔。タイティーダさんは眉を寄せ、出入り口辺りを睨んでいる。

 俺はスパテラを置いて、戸惑いつつ、そちらへ向かった。はっとして、ルクトくんを振り返る。「ルクトくん」

「大丈夫です」彼は頷いて、スパテラを掴む。「仕上げておきます」

「ありがとう」

 ほっとして云い、俺は厨房を出る。ディロさんとタイティーダさんが不審げに顔を見合わせたのが、一瞬だけ見えた。シチューおかわり計画は頓挫したらしい。おいしそうなとりにく、さらば。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ