6783
とはいえ、だ。学生さんを襲撃するならまだわからんでもないが(同じ気持ちにはならないけれど、まあそんなふうに考えるばかも居るだろうなと納得はする)、奉公人を襲撃するのは意味がわからない。
そもそも、下山試験にタイミングを合わせる意味もわからなければ、奉公人ならお遣いだのなんだので御山を出るんだから、そのタイミングで襲えばいいじゃんと思ってしまう。
カーティファルさんだって、お休みでレントをうろつくことはあるぞ。普段からまったく外に出ないひとだったら、余程じゃなければ下山試験にも行かない。それは、なにか理由があって外に出ない訳だから。リードさんしかり、ロマイさんしかり。
なので俺は、ちょっと考えてから言葉を発した。リッターくんの心配もわかるけれど、無駄になやませるのは本意ではない。
「あれは、俺目当てではないと思うよ」
「わかっている。だが、犯人達を見たのだから、これから狙われることはありうる」
ぞわっとした。
それは、そうだな。魔物を駆使していた犯人と断言できるかわからんけど、攻撃してきたやつらとは遭遇している。顔も見た。多分……覚えている。あの、特徴的な髪飾り。違和感しかないあれが、凄く印象に残っていた。
ルミナさんに出会い、リョウくん達とくわしく話をしたあの日以来、俺は御山をほとんど出ていない。
一度、ルミナさんに会いに行こうとしたが、彼女はお仕事の関係で出掛けていた。彼女の同僚に、また来ますと伝言だけして帰った。リョウくん達は気になるが、何度も接触して警邏隊に変に思われたらあれなので、自重している。コマちゃんに会うといういいわけも、そう何度もはつかえない。
リョウくん達は、警邏隊に何度か話を聴かれているらしいけれど、最初ほど疑われている訳ではない。ふたりとも本当に軽業ができるし、最近ではリョウくんがショーに参加している。サーカス団のひと達は能力値が高いほうがいいお仕事で、等級を増やしに魔物を狩りに行くのは不自然ではない。サーカス団員を目指しているのなら、余程戦いに向いていない能力や職業でない限り、誰でもやることらしい。ほかにもなにか理由はあるのだろうけれど、とりあえず警邏隊の疑いはかなりうすまったようだ。
と、わざわざ緑珠さんが報せに来てくれた。彼はアクセサリ屋さんだし、俺が彼からアクセサリを買いたくて呼びつけたふうを装えば、誰からも怪しまれない。奉公人でも入山者でも、自分が御山から出られない状態で、お店のひとを呼びつけることはあるから。




