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 下山したら結婚するんだよって、云いに来る家族かあ。このタイミングで話しに来るんだから、それしかないよな。下山できるかどうか心配して子どもをはげましに来る親、というのは、別に居ないこともない。実際目にしたことはないが、某卿の親御さんがいらっしたとか、某嬢のお兄さんがいらっしたとか、聴く。はげましにきていたり、体力や魔力にいいとされるお薬を持ってきたり。

 ミューくんはもうだいぶ前から、下山は危なげないと云われていたし、そんな用事ではあるまい。そんな、微笑ましい用件だったら、そもそも彼があんな顔をしない。

 ジーナちゃんとの結婚を忘れるな、という念押しだ。おそらく、チェスくんをひきあいにだして。

 それをいやだなと思ってしまうのは、俺が異世界人だからなんだろう。こっちのひとからすれば、家と子どものことを考えている行動で、なんのはずべきことでもない。お家にお金があったほうがいいのはそうだし、子どもにいい教育をうけさせるのだって正しい。いまいち受け容れがたいのは、それが子どもの為ではなくて、家、ひいては親の名誉の為にとっている行動に見えるからだ。

 そう見えるのは俺の心がねじけているからだと思っても、どうにも受け容れられない。それでは片付けられないくらいに、ミューくんの親御さんは、自分の子どもに対してプレッシャをかけすぎている。チェスくん、あれから、元気にしてるかな……。


「マオ」

 振り返ると、リッターくんが走って追ってきていた。立ち停まる。「リッターくん? どうしたの」

 リッターくんは息を切らしもせずに俺の前まで来ると、制服の上着の内側から、なにやらとりだした。懐になんかいれてるひと多すぎ。あの辺にポケットある服が多すぎ、か。

 小さい壜だ。二本ある。水薬かと思ったが、どうも様相が違った。掌に握り込めるくらいの小ささである。かなり小さい。

 さしだされたので、うけとった。ちょっと見てから、リッターくんを仰ぐ。「……えーっと?」

「やる」

「はあ。ありがとう」目をしばたたいた。「……ごめん、これ、なあに?」

 あの……あのねえ、それしか思い付かないのだが、あっちで、トイレに置いておく洗浄剤みたいな、透明感のある綺麗な青をしている。ちょっとどろっとした感じ。壜を傾けると、とろーっと中身が動く。油かなにかか。


 リッターくんは拍子抜けしたみたいに、ちょっとだけ眉を上げた。

「燃焼剤だ」

「ねんしょうざい?」

「火を強める」

「へえ」


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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