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リッターくんはミューくんを、横目に見る。
「冗談を云っているのではない。それがあれのよくないところだ。あらためたほうがいいと俺は思っている」
「じゃあ云わせてもらうが、なんでも率直にしておけばいいと思っているのが君のよくないところだ」
ミューくんがやり返し、リッターくんはちょっと、口を噤む。
「……もってまわった喋りかたは好きではない」
いやだとかきらいだとか云いそうになったのを、なんとかおさえこんだ、という感じの云いかただった。俺も笑いそうになる。リッターくんは、彼なりの基準で、非常に慎重に喋ることもあれば、迂闊なことを口走る場合もある。その真剣で、純粋な様子は、何故だか笑いを誘った。可愛らしいとか、微笑ましいとか、そういう笑いである。ばかにしている訳ではない。
ミューくんも俺と同じような感情になったか、にやにやして返した。
「まるで、やろうと思えばできると云っているみたいだね? そういう喋りかたを、君が?」
「云い直す。俺は、お前が求めるような会話は、得意ではない」
「求めてはいないよ」
「だがお前は、率直すぎてもよくないと云った」
「そうだね。時と場合による、と云ったほうがよかったかな」
「お前は難しいことを云う」
ミューくんが笑う。リッターくんは何故笑われたのかわからないようで、俺とミューくんを交互に見る。
フォルクくんはしかし、危なげなく進級試験にうかったらしい。リッターくんはなんだか不服げだったが、それを認めた。何度も追試のある子が居るなか、フォルクくんには一度しかなかったそうなので、凄いことなのだろう。
「マオちゃん、おつかれさまー」
ディロさんがとことこやってきて、額の汗を拭う。リッターくんとミューくんを見て、丁寧なお辞儀をする。「ロヴィオダーリ卿、ファバーシウス卿、おはようございます」
「おはようございます、ディロさん」
ミューくんはにこやかに挨拶を返し、リッターくんは頷くだけだ。俺は収納空間からゴブレットをとりだし、お水を注ぐ。「どうぞ」
「ありがと」
ディロさんはゴブレットをうけとってお水を飲み、ふーっと息を吐いた。「ああ、生き返った」
ゴブレットを返してもらう。
彼女はやっぱり、お仕事できたらしい。今度の入山試験について、学長から警護班への通達だそうだ。伝糸でもすでに伝えているが、間違いがあってはいけないので、彼女が書面も持ってきた。上でも幾らかの場所をまわり、こちらに居る事務の先生がたにもすでに渡して、あとは班長に渡せばそれでお仕舞だそう。




