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ミューくんは優しく続ける。
「とはいえ、ジーナです。持ち直したようで、結局、大丈夫そうだってことになったんですけどね。もう、追加の試験はありませんし、かといって下山させられないと通達された訳でもない」
そんな通達あるんだ。こわ。ああでも、全員がきちんと下山できる訳ではないそうだし、そこまでショックをうけることでもないのか? でもちゃんと下山できなかったから婚約破棄とか、聴くぞ。
「ああそれと、サキが案外、手こずっていたようで」
「ええ、意外だね」
「本当に。……リオも、調子を崩しているのか、何度か試験があったようです」
「ああ……」
なんとも云いがたく、俺は曖昧に笑って目を逸らす。
気付いたからだ。俺は、ジーナちゃんのことで気をもんでいて、ジーナちゃんとミューくんの結婚をどうにか停めたいと思っているのに、リオちゃんのことは忘れていた、と。
リオちゃんも、シャフローマさまと婚約している。下山すれば、おそらくすぐに結婚するのだろう。リオちゃんがそれを納得しているかはともかく、家同士で決めたことは覆しがたい。
俺にはわからん感覚だけれども、こっちではそれが普通なようだし、口出しできることでもない。自由恋愛がすべて正しいと云えるだけの根拠はない。親が決めた結婚でもうまくいっていて、不都合がないのなら、俺が横槍いれるのはただのお節介だ。
それに上流階級でも、ケルネスさまみたいに自由に恋愛をすることを選ぶかただって居る。法律で自由恋愛が禁じられているのでもないのだし、お見合いだろうとなんだろうと自由なんだったら口は出せん。自由でいいんなら親が決めた相手と結婚します、で終わりだろ。実際のところ不文律によって自由がないとしても、建前がある。俺はばかなので打開策なんて思い付かん。だから、ジーナちゃんのことで気をもんでいる。
リオちゃんは成績がいいみたいだし、体力も高い。試験に手こずるというのは、考えがたかった。それだけ下山試験が難しいのかもしれないが、結婚がいやで気持ちに迷いが出ているのかな、と心配してしまう。下山試験に失敗したら婚約破棄、なんて、聴かない話ではない。入山できたらそれでいいという親御さんも居れば、下山まで漕ぎつけなければ婚約はなかったことに、なんてひとも居る。下山試験は皆が通るものではないようなので、もの凄くいやな話だけど、そもそも入山できるんなら婚約してやってもいいぜ! の段階でだいぶいやな話だったわ。




