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最後の数m、ミューくんは走ってきた。今から戦いにでも行くみたいに、杖を抱えている。或いは、リッターくん対策かもしれない。リッターくんは別に、ミューくんに対しては恋愛感情を抱いているのではないらしいのだが、言動が強すぎて大勢が誤解しているのだ。ミューくんはそれをわかっているのだろうけれど、それはそれとして、適切な距離を保ちややこしいことにならないように、気を付ける癖ができてる。
ミューくんにしてみれば、自衛は幾らしても損はない。間違いが起こらないように気を付けるのは、ね。リッターくんを信用するとかしないとかの問題ではない。リッターくんひとりへの対策ではないから。
ミューくん、癒し手志望だったというのもあって、ディファーズに居た頃にも、戦える職業やそれを目指していたひと達からそれなりに迷惑を被っていたらしい。信じられんが、戦闘員ではない癒し手に対して、最悪なことにセクハラをしてくる愚か者が、結構居るのだ。
警戒を最後までは解かないのは、その辺の経験もものを云っているのだろう。シークンさまみたいなのは御山にも居るんだもの。武器を持って身をまもりたい気持ちは、わからんでもない。
「おはようございます、マオさん」
「おはよう」
サンドウィッチを並べながら、簡単に返す。リッターくんがゆっくり、ミューくんへ追いついて、ぺこりとこちらに頭をさげる。ワウラさんにもそうしていた。ワウラさんがリッターくんへ微笑んで、会釈を返す。ミューくんがにっこりした。「ワウラさんも、おはようございます」
ワウラさんがスープをマグへ注ぎ、警護班へ渡した。具を沢山くれとか汁を多めにしてくれとか、警護班は俺に話すのとは違って饒舌である。俺に対してはほぼ喋らないひとも、ワウラさんにはにこにこしていた。こんなんなら、ここでの給仕、警護班だけでやればいいだろうに。
俺はサンドウィッチをとりだして、並べ続ける。並べる端からなくなっていく。みんな勝手にとっていってくれるので、楽ちんだ、と思うことにする。俺がいやなのか、リッターくんかミューくんに怯えているのか、スープをもらわずにはなれていくひとも散見された。魔物じゃねえんだからこわくねえっすよ。煩わしい会話とかなくていいけど。
「ふたりとも、朝ご飯食べた?」
「食べた」リッターくんは云い、ちょっと考えてから続けた。「しかし、それはうまそうだ」
「リッターのやつ、山道をおりてきたんで、はらが減ったんでしょう」




