表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6921/6944

6764


 ディロさんはちょっと黙ってから、くすくすっと笑った。表情は苦笑いに近い。「やなとこだったって思ってたのに、そうでもなかったみたい」

 納得したみたいに、小さく頷く。

「そうだね。景色はいいとこだったの。あと、お魚屋さんが親切だった。場所が場所だから、還元されたものしか売ってなかったけど、おいしかったし。あ、つまみ喰いじゃないからね。余ったものを食べてたの。家政を預かる人間の特権。でしょう?」

 いたずらっぽく云う。俺もサフェくんもくすっとして、同意を示した。「ですね」

「それくらいうまみがないとやってられないもの」

 サフェくんのいいぐさがあまりに的を射ているので、俺とディロさんはぷっとふきだしてしまった。サフェくんは満足そうに頷いている。

「ここも、いつかそんなふうになるのかな」ディロさんは笑いをひっこめて、なんだか感慨深そうな顔になる。「いつか、奉公人を辞めたあとに、思えるのかな。御山(おんやま)だからじゃなくて、パンがおいしかったなとか、そんなふうに、自分の思い出のある場所として、振り返ることができるのかなあ。……そうなってると、いいなあ」

 俺もサフェくんも、やっぱり同意を示した。今度は頷くだけで。


 ディロさんが以前居たそのまちには、観光地はなく、特別めずらしい薬材や金属が採れるでなく、そこにしかない名産品があるでもなくて、荒れ地に近いまちのなかでは地価が安めなのが売り、というような場所だった。

 レントのような大きなまちとは比べようもなく小さく、薬草市の期間ではないアムディスにも勝てないくらいの少人数しか定住していないがしかし、村とは云えないくらいにひとは居るし施設もあるしそれなりににぎわっている。

 要するに、中途半端な規模だったよう。理由は、荒れ地へ向かうまたは荒れ地から帰ってくるひと達の中継地に、丁度いいから。

 「まち」と云えるような規模で・装備を売っているお店や薬工房や廟があり廟には癒し手が数人居て・娯楽施設も幾らかあり左右組も存在しており・ある程度頑丈な塀があって・地価が安いのでお宿もお食事代もお安くあがる。

 観光地や鉱山など、それを目当てにそのまちへ行くというものはなくても、荒れ地への中継地点としては優秀すぎる。なので宿屋は多かった。ディロさんが件のお魚屋さんへ行く道中、数分歩くだけで三件もの宿屋があったという。まちのどこでもそんな調子で、一般家庭でも一晩幾らで寝床をかしたりしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ