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「それは……運が悪かったですね」
なんとも凡庸、かつ中身のない感想に、ディロさんはしかし優しい目を向けてくれる。俺がそれ以上失言する前に、サフェくんが質問した。「その傭兵は、どういう根拠でそんな行動を?」
「もともと仲違いしていた相手だったって話だけど。それで攻撃されたと思い込んだ。わたしはそこまでくわしく経緯を聴いてはいなくて、馘になった時に残念だったねって、同僚だったひとに教えてもらっただけだから、それも事実かはわからない。駆使魔法を得意としている同士で、いがみあっていたんだって。まあ、ある話だけど、正直当時は納得しなかったかな」
そりゃそうだろう。ディロさんが適当なお仕事をする訳がない。きっと優秀な家政婦さんだったろうに、多分お気にいりの傭兵と天秤にかけて、ディロさんを辞めさせるほうを選んだんだ。いい根性しとるわ、その雇い主。
俺もサフェくんも、しかしその部分には触れない。おそらく、ディロさんのなかですでに決着はついているだろう。じゃなきゃこんなにあっさり云わない。あえてつきはなすことでダメージを軽くしようとするひともいるが、ディロさんはそういうタイプではなかった。彼女は、割と、ためこむタイプだ。侮辱されてそれに納得していないのなら、絶対にこんなふうにあっさり云わない。怒りで亢奮している時なら別だが、今は違う。
「結構いいお給金だったんだけどねー。家政婦にそんなにお金をかけるのは惜しいって、気付いちゃったのかも」
おどけたように云うディロさんへ一瞬目を向けてから、サフェくんは俺を見た。
「その、傭兵達がもともと仲が悪かったっていうのは、仕事のとりあいで……とかかな? 同じような魔物を駆使していたら、なるよね」
ありそうだったから、俺は頷く。「かもね」
「わたしに教えてくれたひとも、そんなふうに云ってたよ。でもわたしはそのひと達を、片方しか知らないし、はっきりしたことは謎。駆使魔法を得意としている同士がいがみあうっていうのもね。たしかに、同じような魔物を駆使していたらそうなるかもとしか云えない。聴かない話でもないねってだけ」
ディロさんはまた、思い出すみたいな間を置いた。手許はしっかり、お皿やお鍋を乾かしている。家政婦のあの魔法って、ほんとにつかえるよな。あれも、魔法なのかそうじゃないのか議論になるらしいけれど、どっちでもいいからほしい。便利だもん。そもそも「普通の」魔法をつかえない俺からすれば、羨ましいことこの上なかった。




