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「ジャーラム」
声に目を向けると、エスクアハ先生が少しはなれたところで手を振っていた。アマラ先生とズフダリフ先生も一緒だ。めずらしいとりあわせ。傍に警邏隊が数人、警護班も数人居るから、空き間の警護のお話かな。
ジャーラムくんが俺達にお辞儀し、そちらへ走っていった。俺達は普通に給仕を続け、からっぽになったお鍋やなにかを収納して、戻った。
「ふーん。変な話だね」
厨房へ戻ると忙しそうだったので、結局手伝っている。サフェくんと並んで、お皿洗い中。
俺がお湯とせっけんで洗い、サフェくんがすすぎ、ディロさんが乾かす、という流れ作業だ。三人居たらとっても楽である。普段からこれくらいひとが居ればいいのに。警護班が何人居ると思ってるのか、御山の上層部のひとに訊いてみたいな。先生達じゃないんだから、数が多んだぞ。そのひと達の食事の準備とベッドメイキングとお洗濯がどれだけの作業量か、ジアー先生やシシース先生以外は絶対にわかってない。あと、食材の領収書をもらう事務の先生達は、とんでもない量を買ってることから人数の多さもわかってるだろうな。
アロさんが居るし、後輩の奉公人も数人居る。さっきの話の続きはできない。ジャーラムくんから聴いたことを話すと、ディロさんは小首を傾げた。
「ディロさんもそう思う?」
「思うよ。あのね、わたしが昔居たまちで、同じようなことがあったの。といっても、やったのは警邏隊じゃなくて、普通の傭兵だったんだけど」
ディロさんは思い出すみたいに目をあちこちへ遣って、ぱっと俺達を見た。「ごめん、ちゃんとした数字なんかは忘れちゃった。あんまり、駆使魔法ってわたし、興味がないものだから。たまたま、その時勤めていたお宅のご亭主が関わってしまってて、覚えてただけ。簡単な話だけどね。そのお宅のご亭主が雇っていた傭兵が、別の傭兵が駆使していた魔物を自分のものにしてしまったっていう」
「それは、そのあとどうなったんですか」
「攻撃された訳でもないし、魔物を奪われた傭兵に落ち度もないから、完全に魔物を奪った側が悪いってことになった筈だよ。そこのご亭主が幾らか賠償金をたてかえたから、わたしは馘になったの」
あっさりと云うディロさんに、俺とサフェくんは顔を見合わせた。俺には彼女がそういう、自分の「弱み」みたいなものを簡単に明かすのが、意外に思えた。サフェくんも似たような気持ちじゃなかろうか。




