6749
「今回のは、じゃあ、どういう理由なんだろうね」
「さあ」
サフェくんは肩をすくめ、ちょっと眉を寄せた。「そんな話、めったにきかないよ」
「めったにってことは、あるにはあるんだ?」
サフェくんではなく、ジャーラムくんが頷いた。有名な話なのか、彼が駆使魔法についての特殊能力を有しているから知っているか、どちらかだろう。サフェくんが説明してくれる。
「数十年前に同じようなことをした、えっと……どこだかの警邏隊が、結局悪かったってことになって、かなりの賠償金を払っているけれど。あれって幾らだったっけ」
「賠償金」
「うん。ごめん、はっきりした金額は忘れちゃった。あ、勿論、魔物は返した上でね。そういう結果になってる事件があったんだ」
「証明、できたの? そのひとが確実に、駆使魔法をもともとかけていたって」
「できたらしいよ。くわしいことは、僕が読んだ資料には載っていなかったけれど。でも、お金がかかったみたいで、それも傭兵協会が支払うって結果だった。そちらは銀貨何枚かだけれど。必要経費だったって」
ふむ。
「それって、ええと……難しくないのかな。とられてしまったら終わりというか。証明する手立てがなかったら、駆使魔法を上書きされて、奪われちゃうよね、完璧に。お金でどうにかなるものでもないと思うんだけど」
「そうだね。だからこそ、悪質だってことで、罰がとても重いんだと思う。傭兵協会のやったことでも、よくなかったって、きちんと罰したのも、それでだよ。けじめをつけないと、被害者が泣き寝入りするのを認めることになってしまう」
あ、今、俺の云いかたが悪かった。お金で賠償できるようなことではないのではないか、と云ったと思われたのだ。そうではなくて、お金を払ったからって証明できるものではないのでは、と云いたかったのだが。
云い直そうとしたが、それよりも前にサフェくんが云った。
「その件に関しては、記録があったのか、なにか、証明になるようなものを魔物に持たせていたか、証言してくれるひとが沢山居たか、どれかじゃないかな。ずっと一緒に暮らしていたとかなら、ご近所さんが覚えているし」
「ああ」
それはそうだ。一緒に暮らしていれば、見かけているだろうし、まさか魔物を駆使しておいて、家のなかに閉じ込めておくだけってことはあるまい。もしそんなことをしているのなら、それはそれで、お世話係のひとが見ていそう。なんかこう、お金持ちっぽいし。




