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人間が考えてるから人間に便利な決まりなんだろうけれど、わかりやすいし単純で助かる。魔物からしたらたまったもんじゃねえだろうな。ああいや、魔物だって人間と戦ってるし、どっちもどっちってことで。
こういうこといいだしたらきりがない。戦闘力や労働力として魔物をつかう以上、枠組みとか決まりとかはどうしてもできるし、人間が考えてるんだから人間に有利で便利になるのは当然。俺が文句を云えた筋合いではない。ばかみたいに魔物の権利がーとかいいださん。おとりにする為に駆使する人間とは友達にはならんけど、俺と友達にならんでもそいつら痛くも痒くもないだろ。
「権利があるから、それを管理する責任も生じる」
「それは、わかってる。レントに這入る時に、書類もみせてもらったよ。魔物が暴れたら、駆使してるひとと一緒に拘束されるとか、そういう決まりが書いてあった筈」
「ああ、そうだよね。うん。マオは、いろいろ、駆使してるから……そういうふうに、権利と、義務があるのは、しってるよね。でも勿論、例外もある」
サフェくんはひょいと、右手の第二指と第三指を軽く立てて、ちょっと振った。
「幾つかね。例えば荒れ地で見付けた場合。これは本当に例外中の例外だけれど、荒れ地にあるものは、見付けたひとに権利があることになってる。基本的には。ええと、人間以外にはね」
「人間」
苦笑いをされた。サフェくんはちょっと、頭を振る。
「つまり、荒れ地で、貝貨の詰まった袋を見付けて、それにきちんと名前が書いてあるとしても、それは遺棄されたもの、或いは主に捧げようとしたものということになって、権利が放棄されていると考えるの。違う解釈をするひとも居るけれど、大まかに云えば、そう。もの凄く単純に云えばね。その、権利が放棄されたもののなかに、人間は含みませんって意味」
「ああ……」
「ごめん、わかりづらい云いかただった」
「ううん。わかるよ」
リャクークのことで、そんな話をした覚えがある。あれは単に、魔物へのおとりとして捨てられた=遺棄=もとの持ち主の権利はなくなっている、という判断だったけど、荒れ地だからゆるいっていうのもあったのか。
情況的に、というあのバルドさんの説明は、荒れ地という特殊な環境であることを鑑みて、という意味だったのかもしれない。その辺り、俺はこちらの人間ではないから、しっかりはわからない。




