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俺の疑問がわかったみたいに、サフェくんは続ける。
「それは、魔物でもそう」
魔物でも……。
なにか思い出すみたいな顔、だった。サフェくんは。彼は、入山目指して勉強していたひとだから、そういう知識が沢山、頭に詰まっているのだろう。
「例えば。えっと、荒れ地近くの村では、荒れ地で狩りをするひと達が居るんだよね」
「うん」頷く。自分が直に知っていることだから、つい、すばやく反応した。「入山経験者で、俺の友達のダストくんもそうだよ。村の伝統なんだって。収穫って云ってた」
「そう。そういう村では、昔からそうやって、荒れ地の実りを戴いてきたんだよね。そういう営みがあった。でも、そのひと達にそれをする権利が特別にあるんじゃないの。誰にでもある。やろうとしないだけ」
わかるようなわからんような言葉に、首を傾げる。
「えーっと……俺が荒れ地へ行って、そこでなにかをとってもいいってこと。あの、やすでとか」
「そう。荒れ地の砂からできた薬を、売ってること、あるでしょ。あれだって、荒れ地近くの村のひと達だけが持ってくる訳じゃないんだって。荒れ地は特殊な場所だから、いろんな決まりの外にあるの」
はあ。……はあ。
つまりだ。多分だけど、俺やほかの地域のひと達が荒れ地へ行って、なにかをとってもいい。それで罰せられることはない。
だって、その反対は普通に行われている。荒れ地おくりとして。
よその地域から堂々とやってきて、人間の決まりに照らして罪のある者達をそこへほっぽり出しているけれど、誰も文句を云っていない。古くからのしきたりったって、裾野が入国拒否すればできないじゃないか。それをしているんだから、荒れ地はおっしゃるとおりの特殊な場所なのだ。
俺が戻ってきた時にも云われたことだが、荒れ地から戻るというのは、こちらの世界のひと達にとっては、神聖ななにかとしてうつる。荒れ地でものをとって普通に戻ってこられて、天罰もなにもなくぴんぴんしているのだから、それでいいということだろう。
天罰があればそれは仕方ないが、人間が罰するようなことでもない、そういう権利がない、みたいな考えなのでは。
それを拡大して、荒れ地から戻ってこれたんだから罪のないひと、みたいな解釈をしているってことか? こうなると鶏が先かたまごが先かみたいな話になるが、そもそも荒れ地ってものの特殊性が関わっている話なのだ。御山と同じで、荒れ地は特殊。そういうもの。




