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ジャーラムくんが肩をすくめた。
「直に話すほうが、はやいって。見付けるのも」
ふみふむ。伝糸持ちが各部署に居るといえ、その伝糸持ちが話せる範囲に目標の先生が居るとは限らん、ということか。研究の為にこもってしまわれるかたも居るしな。図書館の奥底とか、奉公人でも簡単にははいれん。
伝糸持ちは人間だから、電話みたいに各部屋に設置する訳にいかん。ずっとこの部屋に居てくださいねーなんて、ひとによったらおかしくなるぞ。
第一、奉公人になった段階である程度信頼に足る人間といえど、勤めているうちに悪い心がわいて、重要機密を持ち出したひとだって居る。刃傷沙汰を起こした奉公人も居る。機密資料やなにかがある場所には通せない。先生がたがそういうところで資料を前にうんうん唸っていることが多いというのに。かといって、ケータイみたいな便利なものもない。
多分だけど、伝糸で下から上へ本のことで連絡→先生から折り返しでルーレウさんに直に説明してほしいと求める→ルーレウさんが上へ向かって説明するっていう流れだったのだ。先生に呼び出されたって、ランスさん云ってなかったっけ。
「それに、間違いがあってはいけないから、戻ったそうです。伝え間違えて、廃棄されたらことだから……ほん、持っていかないといけないし」
それはそう。本を持ち込んでいいかっていう話で、持ち込んでいいってことになったんだから、早急に持っていくのが奉公人の勤めである。ルーレウさんのそういうとこ、ほんとに好きだわ。あのひとはいいひとだ。
サフェくんも流れを想像したらしく、苦笑いで頷いた。
「あー……そうだね。云っても、しかたなかったなあ、ほんとに」
「あ! ねえ、サフェくんのその目録、できるんじゃないかな」
思い付いて云うと、サフェくんはきょとんとした。首を傾げられる。俺は続ける。
「だって。全部を書いてたら大変だけど、数をしぼればいけると思う。持ち込み禁止の本を書いているひとの、持ち込んでいい本の目録。ね? これなら、そんなに膨大にならないんじゃないかな。だって、ほら、今ある目録にのってる本って、同じ作者のことも多いし」
持ち込み禁の目録は、俺も見たことがある。でっかい本みたいなやつだ。ちゃんと製本されては居ない。羊皮紙みたいなのを綴っているだけ。そこに、小さな文字がびっちり書かれている。大体年代順、大体作者ごとに別れているらしい。俺の知らん、こっちのあいうえお順で。




