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俺達が黙っている保証はないだろうに、と思ったが、それもわからないおばかさんが居るのがこわいよね。とはいえ俺は、ややっこしいことになりたくねえから黙るって選択肢選んでしまいそうなので、まじでジャーラムくんはありがたい。
「ジャーラムくん、あの本、大丈夫だったの?」
サンドウィッチとスープの鍋、さっきメイリィさん主導で焼いたクッキーを沢山収納して、廊下を歩く。思い出して訊いてみると、ジャーラムくんはこっくり頷いた。「問題はないと……先生が、大丈夫だっておっしゃったと、ルーレウさんが云ってました」
ちょっと辿々しく云い、また頷く。
なんでも、あのあとルーレウさんが戻って、問題ないと先生にいわれたと云ったそう。で、そのまま本を持って行ってしまったそうだ。上へ。
ルーレウさん、ご飯食べ損ねなきゃいいけど。あ、届けた先の寮でもらえるか。ルーレウさんは、警護班だけど、狭義の奉公人に対してとっっっても紳士的だから、俺達は贔屓している。
それくらいの贔屓はゆるされるべきだ。態度悪い警護班にだってご飯用意してるし、下着まで洗ってんだからなこっちは。最低ラインは割り込んでねえ。ルーレウさんやジャーラムくんに特別にあったかいご飯用意したり、おいしいケーキやアイスクリームを出したり、魔力薬を余分にあげたりするのは、そりゃあ当然の贔屓。あ、贔屓であることは認める。
サフェくんがなんだか、専門的なようなことを訊き、ジャーラムくんが答える。ぎこちない感じだったから、先生の言葉を繰り返しているだけだ。ルーレウさんが云っていたこと、ってこと。サフェくんが頷いて納得顔なので、ほんとにあの本はなんの問題もないものだったのだろう。
「目録、便利だけど、反対もほしくなっちゃう」
サフェくんは困ったような微笑みだ。俺が小首を傾げると、続ける。
「持ち込んでいい本の目録」
「ああ。便利だね、それは」
「ねえ。そんなの膨大すぎるから、誰もつくらないけど、あったらいいのに」サフェくんは口を尖らせる。「んー、智慧者が居てくれたらな。こっちにひとり居れば、ルーレウさんが疲れることもなかったじゃない。伝糸で連絡できなかったのかなあ」
苦笑いになる。それを思う瞬間はままある。伝糸って、便利だけど不便だから。俺にはわからん基準でつかったりつかわなかったりする。サフェくんにもよくわからん運用基準らしくて、なんかちょっと安心した。俺が異世界人だからわかっていない訳ではなかったのだ、と。




