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アロさんも居るし、奉公人達も居る。俺達同期六人は、オーブンの前にかたまっていた。オーブンは熱いけど、外へつながる扉が開いているし、風通しもいいので、汗だくになる程ではない。
オーブンには、メイリィさんがつくったクッキー種をぽんぽん置いていった天板をいれてある。しっとりしたやわらかいタイプの生地で、焼けていない状態でもおいしそうだった。
ああ、チョコチップクッキー、食べたい。ココナツいりのやつもいいな。ココナツいりのは普通につくれそうだから、今度ためすか。こういう時熱魔法ってほんとありがたいよね。あれ、風魔法か、水魔法なのかな? ものを乾かすやつ。魔法の区分ってたまに変だから、覚えるのが……ああ、俺にとって変ってだけで、こっちでは当然なのかもだけど。
ワウラさんが扉を開け、天板をとりだす。焼きたてのクッキーは、いい匂いをさせていて、焼き色も素晴らしい。「メイリィ、こんなもん?」
こっくり頷いて、メイリィさんはクーラーを示した。メイリィさんってほんと、なんでもできる。家事は完璧だし、知識もあるし、恢復魔法もつかえるし、まじで欠点がない。俺みたいに軽薄にぺらぺらお喋りしないタイプだというのもあって、先生がたの信頼も厚い。評判いいひとだ。俺の評判? 落差が激しいから考えたくねえー。
「ねえ、さっきの話だけど」
ちょっとためらうような表情で、ワウラさんが云うと、ランスさんがびくっとした。顔がこわばる。
ワウラさんは天板を傾け、クッキーをクーラーへ置いた。重なる時の音が柔らかく、重たい。それから彼女は、天板を調理台へ置く。
メイリィさんとサフェくんが、なんでもないみたいに、それにまた、クッキー種を置いていく。やわらかい生地なので、お匙で掬って、ぽとぽと落とすだけだ。ワウラさんが云いだしたことなんてなにも聴こえなかったみたいに、平然と、その作業をする。
ディロさんがオーブンに、薪を足した。熱魔法でてっとりばやく火を点けてしまって、ちょっと心配げにランスさんを見ているけれど、口ははさまない。彼女にしても、サフェくんメイリィさんにしても、どうしてこんなに冷静なのだろう。メイリィさんはともかく、いっちゃわるいが、ディロさんとサフェくんの反応は意外というかなんというか。




