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よそ、というのが、荒れ地の向こうにあるという伝説的な国のことや、なにかほかの、こちらの世界のひとが認識していないような国や部族という意味ではなく、文字通りの「よそ」なのだと理解してもらいたいのだが、それがなかなかに大変な作業になった。
ミューくんはほとんどかたまっていてなにも云わない。だが、俺の話に納得した様子もない。俺が話す程に、嫌悪の色が濃くなる。右手でサキくんのチュニックの胸ぐらをきつく掴み、なにかから隠れようとしているみたいに浅い呼吸だ。
サキくんはサキくんで、どうにも理解が難しいらしく、ミューくんをぎゅっと抱きしめてはなさない。戸惑い顔で、質問を重ねる。「よそなんて、そんな。マオさんがよそだと思ってるだけで、荒れ地のなかにある国なんじゃないんですか? それならつじつまはあいます」
「ううん、違う」
「だって、開拓者が居たところは、もう人間には暮らせないような状態なんでしょう? おかしいですよ。マオさんは生きてるし、病でもないし、ダストさん達と出会った時だって荒れ地でひとりなのにまったく元気だったから驚いたって」
サキくんには、というか、普通のこちらの世界のひとにすれば、よそから人間がやってくるということは、信じられないし意味がわからないことなのだ。それは、ほーじくんに説明した時、ユラちゃんとリッターくんに説明しようとした時の反応で、わかっている。
リッターくんはわからないけれど、ユラちゃんはあの時、おれがよそから来たというのを納得していなかったんじゃないかな。その上で、職業がないとか、そういう衝撃的なことを聴かされて、許容範囲を超えてしまったから、ユラちゃんらしくない「逃げる」という行動をした。
俺は頭を振った。
「開拓者の世界ではないんだと思う」
「それじゃあ、実存者なんかの? でもそれよりも、荒れ地の向こうの国だと考えたほうが自然ですよ。開拓者でないと、よそからひとをつれてくるなんて」
「こちらの世界と大きく違う部分があるんだ」
「違う?」
「マオの世界には魔物は居ないんだって」
ほーじくんがそう云うと、サキくんだけでなく、ユラちゃんの目もまるくなった。リッターくんは顔をしかめる。ミューくんは表情をかえない。固定された、かすかな驚きと増大している嫌悪、のままだ。
「ちょっと、そんなの聴いてない……あ」
「説明の前にお前が席を立ったからな」
リッターくんが冷静に云うと、ユラちゃんは彼をノールックで叩いた。




