表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4088/6877

3945


「飯、くう?」

「ああ、ちょっとみんなとお散歩しようと思って。喋りたいこともあるし」

 俺の云う「みんな」が誰をさしているのか、ダストくんにはわかったらしい、誰のことだと訊いてくることはない。微笑んで、俺の頭を軽く撫でる。

「俺は聴かないから」

「え?」

「お前がいきなり居なくなって、またいきなり戻ってきた理由」

 俺は口を噤む。

 ダストくんは手をおろす。微笑みのままだ。

「俺は入山しても、結局裾野の人間なんだよ」

「……えーと」

「荒れ地は神聖な場所だ。おそろしい場所だけれど、(しゅ)に近い。俺達に恩恵を与えてくれる。御山(おんやま)も、(しゅ)に近い、特別な場所だ。だから、荒れ地から出てきたお前が、御山(おんやま)で消えて、また荒れ地から出てきたって変じゃない。お前が荒れ地でぴんぴんしてるのは、(しゅ)に愛されてるからだ。そう思ってる」

 俺はなにか云いたいが、なにも云えなかった。ダストくんは静かに、ゆっくりと云う。「だから、お前が居なくなった理由も、戻ってきた理由も、聴かなくていい。(しゅ)の思し召しだと考えたほうが、俺にとっては楽しいからな」

「ダストくん」

「でもあいつらは、裾野で、それも荒れ地近くで育った訳じゃない。いろいろ、折り合いつけたいことはあるだろう。その為に、必要な情報もきっとある。説明できることなら、してやれよ」

 そう云って、ダストくんは片手を振りながら食堂へ向かった。「俺はなつめやしくいたいから、欠席」

 俺はダストくんになにか云いたかったが、なにを云ったらいいかわからなくてなにも云えなかった。


 厨房には這入れなかったけれど、フロントのひとへ、昨夜のトマトスープがおいしかったのでつくりかたを知りたい、というと、料理人へ訊いて参りますと奥へひっこんだ。すぐに、レシピを書き付けた羊皮紙の切れ端を持って、戻ってくる。「こちらでございます」

「いいんですか?」

 だめもとだったのだが、ここの料理人さんは尋常じゃなく気前がいいみたいだ。フロントのひとがにっこりして頷いた。

「つくりかたを訊かれるくらい、気にいってもらえて、嬉しいと」

「あ……そうですか」俺は羊皮紙をうけとる。「あの、これ、お礼です」

 フロントに置いたのは、はちみつの詰まったつぼだ。蓋を開けなくても香りでわかるのだろう、フロントのひとは目をきらきらさせている。対価として機能しているらしいので、ほっとする。

 俺はもう一度お礼を云って、フロントから離れ、外へ向かった。羊皮紙を収納する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[良い点] みんな気前がいいないいな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ