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翌朝目が覚めると、ほーじくんは俺のチュニックをぎゅっと掴んで、すやすや寝ていた。
上体を起こして、隣のベッドを見る。サキくんは髪をまとめずに眠ってしまったみたいで、金色の糸みたいな髪の毛がベッドから床へ垂れていた。自分よりも小柄なミューくんにしがみついていて、胸の辺りに顔を埋めている。ミューくんは、サキくんの頭を両腕で抱えるみたいにしていた。
親戚の子どもがお昼寝している時にそっくりだったので、くすっとしてしまう。あの、たとえはよくないんだけど、あれだよね。仔犬のきょうだいがころころ転がりながら遊んでるのを見ているみたいな気分になる。
ミューくんの寝顔は安らかだ。サキくんもそう。
俺のことで凄く、不安にさせたし、心配もさせてしまった。ミューくんにもサキくんにも。
それに勿論、ユラちゃんやリッターくんにも。
俺には説明の義務がある。
ほーじくんの手をそっと開いた。彼は呻くけれど、目を覚ましはしない。
俺はほーじくんの額を軽く撫でてから、ベッドをおり、きがえてお部屋を出た。お手洗いに行ったり、顔を洗ったりして、気分を落ち着ける。
説明しないといけないことと、口に出してはいけないことの差が、俺にはわからない。あの天罰は、警告みたいなものだったのかもしれない。二度とくらいたくないが。
つめたいお水で顔を洗うと、気持ちはかたまった。収納空間には井のお水が沢山あるし、また天罰をくらっても問題はない。だから、みんなに俺がもと居た世界のことを喋ろう。きちんと説明しよう。
同じ天罰とは限らないけどね。
お部屋へ戻ると、ミューくんがベッドの上に座っていた。眠そうな顔で、ブラシをつかってサキくんの髪をといている。ミューくんの髪はうなじが見えるくらい短い。また切ったんだろうか。
サキくんはまだ寝ている。
「おはよう」
低声で云うと、ミューくんは手を動かしながら俺を見た。微笑んで頷くが、声は出さない。サキくんを起こしたくないんだろう。
俺は微笑んで、そちらへ近付いていく。ミューくんに背を向けて腰掛ける。さっきよりも小さく云う。「ミューくん?」
「はい」
「話したいことがあるんだ。ミューくんとサキくんに。それに、ユラちゃんとリッターくんにも」
ミューくんは黙っている。でも、手は停めない。ブラシとサキくんの髪がたてる、葉擦れのような音が、絶え間なく響いている。
窓がかつかつと鳴った。小鳥が来たんだろう。サキくんが唸って、体を起こす。「ミュー……?」
「マオさん、サキの髪をあんでからでいいですか?」
俺は肩越しにミューくんを見て、頷いた。




