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ダストくんは頭を振り々々戻っていった。ちゃんと錠かけろよ、とだけ云い、俺の提案は一顧だにせず。
ほーじくんは俺へ向けて肩をすくめたものの、ダストくんの忠告に従って錠をかけた。それから、とぼとぼと戻ってきて、ベッドの端の端にちょこんと腰掛ける。
俺は隣のベッドを見て、息を吐いた。ミューくんとサキくんは絡まった毛糸玉みたいになってしまっていて、収拾がつきそうにない。もう遅い時間だし、まだくすくす笑いが聴こえるがいずれ笑い疲れて眠るだろう。
「ねよっか、ほーじくん」
「うん……」
「灯、半分つけといていい?」
「うん……」
ミューくん達の枕許にあるランタンを消した。ほーじくんは、窓際に漂っていた魔法の灯を、窓の外へ追い出す。魔法の灯は熱がない、もしくは弱いみたいで、天井や壁に接していても、そこが焦げたり燃えたりはしない。それに、放っておくと勝手に消えるのだ。あれでなんとかなるだろう。
ああ、そっかあ。
夜、外を出歩くと、たまに魔法の灯が大量にふわふわしてる場所がある。あれってもしかして、寝る為に灯を追い出したお家がかたまってるところなのかな。
こちらの世界の窓は木製や金属製が普通で、外からの光を完全に遮る。たといよなかに目が覚めても、魔法でぱっと灯でも火でも出せるので、くらくてなにも見えないという心配はない。お部屋が明るいと眠れないというひとは、灯を追い出してしまえばいいわけだ。
魔法の灯は、俺は出せないので、消しちゃえばいいんじゃないのと思うのだが、そうもいかないのかもな。ああ、謎が解けた。市場の方向に灯がういているのなら、ああよなかまでやってるんだな、傭兵達がよなかでも活動してるもんな、と思っていたが、市場もないのに灯が集中しているところはほんとにわからなかったのだ。理由が。
がらす窓じゃないから、外にどれだけ灯がういてようが関係ない。ほーじくんが追い出した灯はふわふわ移動してたし、もしかしたら風に流されて吹きだまっていたのかもしれない。はあ、異世界面白い。
俺は大きく頷いた。窓を閉めたほーじくんが、とぼとぼ戻ってきて、小首を傾げる。「マオ、どうしたの」
「あ、ちょっとね。結果があったら理由があるんだなあって思ってさ。そんなに大袈裟じゃないけど、意味がわからないようなことでも、意味があるんだなあ」
「……むずかしいの、ぼく、わからないよ」
ほーじくんが辿々しく云うのが可愛くて、俺は彼の手をひっぱり、ベッドにひきずり込んだ。ほーじくんは小さく悲鳴をあげる。俺も笑ってしまった。サキくん達のがうつったかな。




