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宿についた。食堂ではダストくんが待っていて、俺達の為に夕食を注文してくれる。俺達が席に着いて、ゴブレットのなかの冷えたお水を飲んでいると、サキくんがやってきた。
サキくんはユラちゃんの隣に座る。ユラちゃんがからかうように云う。
「ミューにひっかかれたの、サキ?」
「ひどくね」サキくんは簡単に返し、自分の頬を指さした。「でもすぐに治療してもらった。大丈夫だよリッター、彼はできた人間だから、もう怒りはおさまってる」
「そうか。明日、謝ろう」
リッターくんの真剣すぎる返事が面白かったのか、サキくんはくすっとした。
ダストくんが戻ってきて、ほーじくんの隣に腰掛けた。「サキの分も頼んだぞ」
「ありがとうございます」
サキくんはにこっとする。御山を介して、仲好くなっているのかな。そういや、このテーブル、俺以外は入山者じゃないか。
「ねえ、熱の魔法でやってるのかしら」
ユラちゃんが顎をしゃくる。調理場のほうだ。どうして熱魔法だと判断したんだろう、と思ったが、ダストくんが答えをくれた。「ああ、ほんとだ。薪や炭の音がしないな」
はあー。そっか。
入山者って、やっぱ普通じゃない。そんなことに気付く? 普通。こっちの世界のひとでも大多数は気にしないだろう。こういう観察眼が、入山につながったんだろうな。
ていうか、ユラちゃんはいろんなことに興味を持って、その上でおろそかにしないで徹底的に調べるから、知識量が膨大だもの。御山の先生がたは、そういう学究心というか探究心というか、を、凄く評価しているんじゃないだろうか。勿論、魔力が高くて大きな魔法をつかえるっていうのもあるけど、ユラちゃんの入山は勉強に対する意欲も加味されてだろう。
ほーじくんが可愛らしく、両手でゴブレットを持ってお水をすすっている。少し眠そうだ。
「この辺りは、木が貴重だから」
「それで、熱の魔法なのね」
ユラちゃんはテーブルに肘をつく。「この辺りまで来たのは、数える程なのよ。裾野って、御山もあるし、傭兵協会がしっかりしてるから、どこもレントみたいなものかと思ってたけど、全然違うわね」
リッターくんとサキくんが、よく似た頷きをした。
「まちへ這入るのに金を要求する門番が居るとはな」
「え? そんなことがあったのかい?」
サキくんが驚いた声を出す。「裾野でもそんなことするんだ」
「あの門番だけだよ」ダストくんが苦笑いする。「ハーおじさんは、もめたらややこしいって、放ってるけど、俺はもうだめだな。おとなしく収穫だけしておこう」




