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サキくんはそれ以上なにも云えないみたいで、沈んだ表情で口を噤んだ。ユラちゃんが口を開くが、言葉は出ない。ほーじくんはリッターくんの肩を軽く、なぐさめるみたいに叩いた。
ミューくんが呆れた顔になっている。その手が、サキくんの腕から離れた。
「なに、云ってるんだ、お前」
「ミュー?」
ほーじくんが心配げにミューくんを見る。
ミューくんは怒っているみたいだ。
「護衛士とか、そういう問題じゃないだろ。お前の満足の為なら、ハイオスタージャ卿になにもしてやるな」
「ミュー、ちょっと、」
「ほーじは黙ってて」
ミューくんがぴしゃりとやると、ほーじくんは棒をのんだようになる。ミューくんは目を細くして、リッターくんを睨んでいるらしい。
「お前にだけ、誇りとか、矜持とか、そういうものがあると思ってるのか」
「……どういう意味だ」
「そのままだよ。ハイオスタージャ卿にだって誇りはある。彼は癒し手だ。俺だって、彼が君を庇った気持ちがわかるさ。俺達は弱いし、ひとを癒すくらいしか能がないけど、他人が血を流すのだいっきらいなんだ。それが重罪人なら気にしないかもしれないけど、ちょっとした知り合いでも怪我をしたり病になっていたりするのは見たくない。特に、自分に好くしてくれた人間が怪我なんてするところ、絶対に目にしたくないね。自分が後から治療してやれるとしてもいやだ」
リッターくんから、ニーバグ達が手をはなした。ふたりはみい、みい、と泣きながら、リッターくんのあしにまといつく。
リッターくんはミューくんの言葉がわかるのかわからないのか、黙っている。黙ってミューくんを見ている。
ミューくんは強めに云った。
「俺だって、自分が怪我をするの以上に、ジーナやチェスが怪我をするのがいやだ。ハイオスタージャ卿はそういう気持ちで君を庇ったんだ。ひとが怪我をするのを黙って見ているなんてできない。癒し手っていうのはそういうものなんだよ」
「……なら、尚更、俺が責任をとるべきだな」
「君にそうしてほしいとハイオスタージャ卿は思ってない」
断言だ。
ミューくんとリッターくんは睨みあっている。
「ハイオスタージャ卿は君がそんな顔で、責任だのなんだのと云って、燕息が必要な状態になっていくのを望んでない」
「俺は正常だ」
「正常じゃないね。もう一度云うけど、ハイオスタージャ卿は時間がかかるけどきっと目を覚ます。君が彼に感謝しているなら、治療費を出すだけにしておけよ。彼を拘束するな。それも自分の誇りの為にだなんて」




