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「そうじゃないわよ」ユラちゃんがもごもごっと喋る。「そうじゃなくて、なんていうか……意外って云うんじゃないけど。でもやっぱり、あのふたりって、仲が好いのね?」
「いいよ」
即答して、ミューくんは眉をひそめる。「なあ、もしか、あのふたり云い争いでもした? 参ったな、ハイオスタージャ卿は大丈夫そうだけど、起きるまでにはかなり時間がかかると思うよ。ネクゼタリー卿、それで気に病んでしまってるの?」
ミューくんらしい心配だ。ユラちゃんとほーじくんは目を合わせ、ほーじくんが小さく云う。
「そういう訳じゃないんだけど……」
「けど、なんだよ、ほーじ?」
「……リッターが、ニニのこと、責任とるって云ってて」
「あのばかはばかだから行動がばかなのよ」
ユラちゃんはフルスロットルだ。ぶんむくれている。「自分の影響力もなにもわかっちゃいないんだから。とにかく、あいつが変にくちばしをつっこんで、ややこしいことになってるの」
「はあ……?」
ミューくんは訳がわからないのだろう、きょとんとした。
「遅かったな」
ほーじくん以外がびくっとした。ミューくんに至っては、サキくんの腕にとびついている。それから、ほーじくんも含めて立ち停まる。
人波から唐突にあらわれたのは、リッターくんだ。何故かヨヨとシシと手をつないでいる。そのふたりは口をもごもごさせているので、なにか食べているらしい。夜になると魔物の討伐に出るひとが多いので、食べもの屋さんや武具屋さんは、遅くまでやっていることが多い。
「お」ミューくんはサキくんの腕をぎゅーっとする。「おどかすなよ、リッター。君、ジーナよりも気配がわからない時があるぜ」
「そうか?」
ミューくんが激しく頷いた。ヨヨとシシが笑い声らしいものをたてる。
「あんた、こんなとこでなにしてんの」
むしパンをなんとかのみこんで、ユラちゃんが云う。リッターくんは肩をすくめるみたいにしたが、首を傾げたのかもしれない。
「手紙を出してきた」
「は? ……ああ、ロヴィオダーリ家に?」
リッターくんは頷いた。
「ああ。レティアニナの怪我について、俺が責任をとると伝えた。ハイオスタージャ家が求めれば、彼をめとると」
「あのねえ」
ユラちゃんは額に手を遣る。言葉が続かないらしい。
サキくんが表情を曇らせた。「リッター、ハイオスタージャ卿のことで責任をって……君だけの責任じゃないんじゃないの……」
「そうかもしれないが、自分に落ち度があったのなら罰はすべてうけるつもりでないといけないと、父に云われている」
リッターくんらしいものいいの直後、彼はらしくなく、顔をゆがませた。「俺は護衛士としてふがいない」




