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レントへ近付くにつれ、こういう「まち」は規模が大きくなっている。
俺達はぶらぶらと、宿まで歩いていた。誰も、急いではいない。急かすひとも居ない。お喋りが楽しくて、なんとなく速度は鈍っている。
夜だから空がくらいのは当然なのだが、視野は悪くない。レントみたいな街灯がたまにあるのだ。あれはどういう仕組みなんだろう。御山で見た灯のように、魔力でどうにかなっているのかな。開拓者だか実存者だかに天罰をくらいそうな構造のものではないだろう。
「ネクゼタリー卿、少し元気がないみたいだったけれど、どうかなさったの?」
ミューくんが云いだしたのは、いい匂いを漂わせているお店の並んだ通りを歩いている時だ。
パインアップルとレモンの匂いをさせている串焼き屋さんに気をとられていた俺は、ミューくんを見る。いつの間にか、むしパン屋さんで買いものしていたユラちゃんが、走って戻ってきた。甘い香りの大きなむしパンの包みを、俺達に配ってくれる。ユラちゃん太っ腹! うわあ、めちゃくちゃやわらかくておいしそう。ふわふわだあ。
ユラちゃんは俺達に歩調を合わせながら云う。
「ミュー、ネクゼタリー卿を知ってるの?」
「勿論。癒し手になる前だけど、魔物の討伐に出る時に、指導してくださったんだ。その後、何度も一緒に討伐に行ったよ。俺のことを、将来偉大な癒し手になるなんて、誉めてくれたんだぜ。それは外れたけどね」
ミューくんははにかんで笑う。「ネクゼタリー卿が好くしてくれたから、討伐もつらくなかったんだ」
「あ」
ほーじくんがむしパンの包みを両手で持った格好で、ぱかっと口を開けた。
「あにさま、ミューのこと話してたかも……ぼく、みんなのことに興味なくて、あんまり聴いてなかった。でも、サーダあにさまは、ちゃんと聴いてたと思う」
ああ。そっか。四月の雨亭で、ミューくんとサーダくんほーじくんがはじめて顔を合わせた時、サーダくんがミューくんに、癒し手の子、と云っていなかったっけ?
あれって、ネクゼタリーさんからミューくんのことを聴いて、なんだ。成程な。
あ、じゃあ、宣言前の子は祇畏士と同じグループにはならないのかな。年代が近いから顔を合わせたことがあるのかな、と思っていたのだけれど。
でもそうか。普通に、何度も行や討伐に行っている、熟練の癒し手が、ディファーズには大勢居る筈だ。還元士もそう。祇畏士、癒し手、還元士は、適職にあったらほぼ確実に選ばないといけないのがディファーズだ。




