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三人目は割とすぐに正気をとりもどし、正座みたいな格好になって、ミューくんにぺこぺこ頭を下げた。「癒し手さま……あの……すんません」
「いえ。お加減は、どうですか? もう、気分は悪くないですか」
「は……あの。ちょっと、吐き気がします」
「沢山呑むからですよ。こんなことは続けちゃだめ」
ミューくんは子どもに云うように、甘い調子で云い、三人目はまたぺこぺこする。シアイル系か、ディファーズ系か、どっちかぽかった。どちらも、癒し手は働き相応に尊敬されている地域である。
ミューくんは三人目に肩をかし、近くのお店までつれていった。お手洗いをかりるそう。立ち呑み屋さんは、キッチンと窓口でお店がいっぱいいっぱいで、お手洗いはついていない。
ミューくんはすぐに戻ってきた。「なかで寝むって。あの建物、宿屋もやってるみたい」
「あのひと、お金あったの」
ほーじくんが心配そうに云う。ミューくんは苦笑いで、握っていた右手を開いた。銀貨が数枚、掌にのっている。「いらないって云うのに、申し訳ないからって」
「そこそこまともな人間じゃないの」ユラちゃんは呆れ顔だ。「それがどうして、前後不覚になるまで呑むのかしら」
「お酒はおいしいらしいし、癖になるからね。それに、呑まなきゃやってられないってこともあるよ。つらかったり、淋しかったりでさ」
ユラちゃんには理解できない話だったのだろう。くいっと肩をすくめる。
「まあ、どうでもいいわ。あれも治療するの?」
彼女は地面に大の字になって寝ているふたりを指さし、ミューくんが肩をすくめた。
「ミュー、君は優しすぎるよ」
宿に馬を預け、歩いて戻ってきたサキくんは、お冠だった。ミューくんが膝枕してあげている酔っぱらいを、嫌悪もあらわに睨みつける。
ミューくんは恬然としていた。「仕方ないだろ。放っておいて死んでしまったら、寝覚めが悪い」
「ミュー、彼らは君に感謝なんてしない。いや、感謝するかもしれないが、君が思っているようなことじゃない。酔いが覚めたらまた酔うまで呑むだけだ。それを繰り返してるひと達なんだよ」
「でも、もしかしたら今度は酒を断とうと思うかもしれないじゃないか。幾らか払って、廟へはいれば、廟のひと達が断酒を手伝ってくれる。仕事を続けながらでも、それはできるし」
「廟へ行けばの話じゃないか。行けばいいと僕も思うよ、しかし実際のところ、彼らは楽しくて酒を呑んでる。楽しんで自分の生活を破壊してる」




