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お酒は関係なく、金属製の粗雑な食器(というか、うすっぺらいボウルみたいなものと、なんの飾りけもないお匙)で食事をしているひと達は、酔っぱらい達にいやそうな目を向けていた。
ふむふむ、おそらくクスクスに、トマトシチューらしいものをぶっかけて食べている。レーズンの匂いがかすかにした。とり肉がはいってる。わ、凄くやわらかくなるまで煮込んであるんだ、骨から簡単に外れる。うまそうなんだけど。
「おばちゃん、お代」
「はい。たしかに」
「じゃあ。……主に唾する者め」
しらふのおねえさんが、からの食器を窓口のおねえさんへ返し、酔っぱらい達に吐き捨ててから門へ向かう。彼女の仲間らしいひと達も、慌てて残りの食糧をかきこみ、続いた。
魔物退治か、薬材採集に出る傭兵達らしい。武装しているし、傭兵許可証らしいものを門番に提示して、なにか話している。
ミューくんがあしを停めた。俺達も停まり、振り返る。
「ミュー? なによ?」
ユラちゃんが云い、ミューくんは肩をすくめた。ひょいと、酔っぱらい達を指さす。「ごめん。治療、してきていい?」
ミューくんは心底、癒し手だ。もしかしたら、多少なりとも気持ちが優しいひとでないと、適職に癒し手がないんじゃないかとさえ思う。彼や、ニニくんの優しいところを見ていると。
ミューくんは、酔っぱらって地面に這いつくばっているひと達に近寄っていって、優しく言葉をかけながらその傍に座りこみ、治療をはじめた。燕息をかけて、酔いをどうにかしようとしている。どうやら、「酔い」は状態異常にはいるようだ。
酔っぱらっているのは、もののみごとに男のひとばかりだった。ただまあ、これは男女の差というよりも、単純に日が暮れてから外をうろうろしている女性が少ない世のなかだから、じゃないだろうか。傭兵は別だけど、そういう理由がない女性は夜、出歩かない。女性は家で呑んでいるのかもしれない。
そういえば、娼妓も、女性だと絶対に立ちん坊しないらしい。変なところで女性が凄く保護されている。
ミューくんが治療している相手が、うーんと唸って起き上がった。「大丈夫ですか?」
ミューくんが優しく問いかける。
屋台の灯があるし、門の近辺はたいまつなどでかなり明るい。それらがあるので、相手にはミューくんの顔はおぼろげながらも見えている筈だ。
が、彼はなにか勘違いしたのか、勘違いしたふりなのか、ミューくんにひしと抱き付いた。ユラちゃんとほーじくんが同時に手を振り上げるが、ミューくんがくすくす笑ったのでふたりとも動きを停める。




