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ユラちゃんはもう一度舌を打った。「おお、いやだ。こんなことを当人の居ないところで喚くなんて、はずかしいったらないわ。わたし、次のまちについたら、ネクゼタリー卿に話すからね」
「ユラ……」
「停めないで。口から出したんだから、当人にきちんと云うべきなの。わたしははずかしいことはしたくないのよ」
ユラちゃんは自分の言葉を相当な失言と考えているみたいで、むっつりして黙ってしまった。
俺とほーじくんは顔を見合わせる。実際のところ、ユラちゃんにしては最大級に誉めていたと思う。
ほーじくんが低声で云った。「ユラのほうが、いい子だね」
俺は苦笑で頷く。こういったやりとりを、もっと気楽で心安まる環境でやりたかった。
次のまちへは、日が暮れてからついた。ひっぱりだしたおぼろげな記憶では、以前はここでも銀貨を何枚か支払って這入っていたのだが、今回は入門料を要求されることはない。やっぱり、入門料なしが普通なのかな。だとしたらどうして、前はお金をとられたんだろう。
馬車を降り、宿まで歩くことにした。俺、ほーじくん、ユラちゃん、ミューくんの四人でかたまって歩く。御者をしているひと達は降りられないし、サキくんは宿で馬をつないだらひきかえしてくるらしい。ニニくんは目を覚まさない。カルナさん達はその看護がある。
レント程ではないが、ここのまちも充分ひろかった。大きな馬車が悠々すれ違えるだけの道幅がある。こう云うのって、誰が整備するのかな。やっぱりまちだろうか。それとも、傭兵協会や商人協会かな。
遅くにまちを出入りする傭兵向けなのだろう、お弁当屋さんや立ち呑み屋さんが、門の裏手にかたまっている。ちょっとごちゃっとして見える区画である。レントの東門傍にも、酒場や軽食屋さん、お弁当屋さんはかたまっていた。
立ち呑み屋さん、といっても、お酒を呑んでいるひとはまれで、食事をとる為にそこに立っているひとがほとんどらしい。そのなかの数人が、赤い顔をしていた。
裾野のひと達は普通、お酒を呑まないので、ほんの何口かで劇的に酔っ払う。賭場に行くようなひと達は隠れて飲酒しているので、ある程度耐性もできているのか、自分の酔う量を知っているのか、そこまでの痛飲はしないので酔うと云ってもほろ酔いまでである。
が、そこのひと達は加減がまったくできていない様子だった。小さい建物の窓口からお酒のゴブレットをうけとってはあおり、うけとってはあおりして、その場に座りこんでいる。倒れていびきをかいているひとも居た。




