表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4065/6876

3922


 カルナさんとミエラさんが、不安そうにリッターくんを見ている。彼女達は、ニニくんの傍にずっとついているのだ。ニニくんはユラちゃん達の馬車の座席に寝かされている。

 ふたりは、ミューくんとほーじくんにも対応したんだろう。表情はくらい。ミューくんから、ニニくんの病状……というのかな、状態を聴いて、廟に預けるしかないと云われ、困惑している感じだ。いや、困惑じゃなくて、哀しんでいるのかな。

 自分の感情がもやもやしていて、他人に気を配れない。

「ロヴィオダーリ卿」

「レティアニナの顔を見ても?」

 リッターくんは表情をなくしていた。冷静に、淡々と云う。カルナさん達は顔を見合わせて、しばらくなやむ様子を見せたあと、頷いた。


 ニニくんは仰向けで、胸の上で手を組み、微笑むような口許で寝息をたてていた。体にはうすでのブランケットがかけられている。

 馬車にのった俺とリッターくんに、馬車の外からカルナさんが云う。「さっき、フォージ卿とファバーシウス卿がいらして、体の向きをかえてくださったばかりですの」

「そうか」

「レティアニナ、よい夢を見ているみたいで、にこにこしていて」

 カルナさんは言葉を切り、黙って扉を閉めてしまった。

 俺はニニくんの向かいの座席へ腰掛ける。リッターくんは立ったまま、ニニくんを見ている。「どれくらいの確率なのだろうか」

「え?」

「レティアニナが、目を覚ますのは」

 俺は口を噤む。

 リッターくんは項垂れる。「彼を見ているのはつらい。こうやって徐々に朽ちていくだけならば、いっそ、殺してやったほうがいいのかとも思う」

「リッターくん!」

 息をのむ。俺はその後の言葉が続かない。ただ、リッターくんの言葉に嫌悪感がある。その嫌悪感の理由はわかっている。主体が自分にあるところだ。タスも、リッターくんも、俺には同じに見える。自分がつらいから、自分が見ていたくないから、自分が……。

 頭が痛い。俺だってきっと、そういう気持ちになることはあるんだ。だからリッターくんやタスを責めちゃいけない。彼らの感情は、間違っていない。ただただ俺がそれをきらっているというだけだ。

 この問題に正しいも間違いもない。


「しかしそれは、俺のわがままだ」

 リッターくんが肩越しに俺を見て、低めた声で云う。

 彼の目は潤んでいる。

「レティアニナがそれを望んでいるかわからない。俺に彼を好きにする権利はない。だろう? マオ」

 リッターくんは強すぎるのだ。

 俺は否定も肯定もしなかった。その二択を迫られたことがない俺が、外野からとやかくいう資格はない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ