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しばらく歩こうということになった。馬車の車輪がどうにもならないからだ。
街道沿いにはかし馬車の駅みたいなのがあるから、そこで車輪の分を弁償し、あたらしい馬車をかりる。ネクゼタリーさんがそんなことを喋り、ダストくんやユラちゃんが同意した。それがいいと。
俺は常識がないから、黙っている。
歩くのは楽しかった。というか、歩きながらみんなと喋るのが。「ダスト、葉っぱがついてるよ」
「え?」
「はい、とれた」
ほーじくんが手を伸ばして、ダストくんの頭から葉っぱをとってあげている。ふたりは仲好しだ。ダストくんは、ティヴァインの兄弟にとても親切に接する。
三人とも、行に何度も行っているし、荒れ地近くの村になじみがあるんだと思う。ダストくんは、それでサーダくんを知っているのかも。行のひと達なら、村では歓迎し、はちみつ漬けのケーキを食べさせるのが普通だ。顔見知りにもなる。
「リッター、次は大きなまちだそうだから、ロヴィオダーリ卿に連絡しなさいよ」ユラちゃんが尊大な調子で云った。「ニニの治療を請け負ってくれる癒し手を、とっととさがしてもらうの。ロヴィオダーリ卿ならできるでしょ」
「ああ。それがいいのだろうな」
「いいのだろうじゃないわ、いいのよ。あんた、手紙を出せるくらいの銀貨は持ってるんでしょ」
リッターくんがこっくり頷いた。ニニくんは今、ユラちゃん達の馬車のなかだ。ミエラさんが傍についている。リッターくんは、もし魔物の襲撃があったら、外に居たほうが対処しやすいからと、やっとニニくんから離れたのだ。
リッターくんは傍に居るカルナさんを見る。「ハイオスタージャ家へも連絡すべきだろうか」
「いえ……」
カルナさんがゆるく、頭を振った。「わたし達が荒れ地を出たことは、ネクゼタリー卿のご厚意でもう報せていますし、レティアニナがこれからどうなるかはっきりしないのに、報せることはないかと存じます」
「そうか」
リッターくんは口を噤み、それから開く。「彼のことは、俺が生涯、面倒を見る」
「リッター」
カルナさんが口を半開きにさせたが、ユラちゃんが鋭い調子で云った。「ニニはあんたをこわがってたわ。喜ばないわよ」
「俺の問題だ」
「あんたっていつまで経っても子どもね。わがままも大概になさい」
ユラちゃんはふくれっ面で、とたとたと前方へ歩いていく。「ネクゼタリー卿?」
ユラちゃん達の馬車の御者は、ネクゼタリーさんだ。マルジャン達の馬車はサーダくんが運転し、車輪が欠けた馬車はダストくんとほーじくんでうまく導いている。
「ニニが目を覚まさない場合、どうなさるおつもりですか」
感想ありがとうございます。はげみになります。




