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頭痛がしてきた。
タスは、努力したんじゃないか。悪いことなんてしようとしていなかったじゃないか。
「タスは悪くないよ。どちらかというと、俺の所為だ」
「違う」タスは喚くみたいに云う。「わたしが考えなしだった。レティアニナが怪我をするのも魔物に襲われるのもいやだった。そんなことは起こしたくなかった。今それを考えただけでも吐きそうになる。あの弱々しい小さないきもの。あれが怯えているのを見たくない。泣いているのも見たくない。想像したくもない。封印されるほうがずっとましだ」
「タス」
「だから顔を背けて、逃げようとしていた。それもままならないから向こう見ずなことをした。まもっているつもりだった。愚かなことに。わたしのくだらない保身と、くだらない誇り、ばかみたいな矜持、まやかしの安心の為に愚かな行動をした。わたしの為にしたことだった。その所為で、あいつはレットゥーフェルに狙われた。あんな状態に」
後が続かない。
タスは黙りこんで、右手で目許を覆った。「頼む、ひとりにしてくれ。気分が悪い」
俺はなにも云えず、馬車を降りた。
ダストくんが、サーダくんとほーじくんを、交互に宙へ投げている。三人は楽しそうだった。くすくす笑い、ダストくんのまわりでニーバグふたりがはねまわっている。
サーダくんがヨヨを抱え、ほーじくんがシシを抱えて、宙を舞った。ニーバグ達は嬉しそうにみいみい云っている。
「マオ、ひどい顔」
ステップに腰掛けてじっとしている俺に、ダストくんは近付いてきて、そう云った。頭をぐしゃぐしゃっとされる。ダストくんはそのまま、馬車に背をつけた格好になる。
サーダくんとほーじくんが視野を横切る。
「めし、くってねえんじゃねえの? お前、腹が減ると機嫌悪くなるぜ。あ、そのこと、ちゃんとほーじに喋ってるからな。お前が餅を食べられなくて泣い」
「ダストくん、レットゥーフェルってきらわれてるの?」
仰ぎ見る。
マルジャンとヤラが、エクシザと一緒に藪の近くに居るのが、目にはいった。
エクシザが地面をほじくりかえしている。ひょっとしたら、マルジャン達の為に木の根でもさがしているのかもしれない。エクシザはこちらへ戻ってから、とても、精神状態が安定している。マルジャン達に無理を云わないし、俺に対しても配慮を見せてくれていた。それだけ、あちらの世界が、エクシザには大きなストレスだったのだろう。
ダストくんは足許を見て、俺の頭を軽く撫でた。
「きらわれてるっていうか、こわがられてるな」




