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俺は項垂れる。
どうしてこんな、変な質問をしているのかな。
答えはわかりきっている。レットゥーフェルは、人間を襲い、冒瀆魔法をつかう魔物だ。きらわれているかこわがられているかはともかく、普通の感覚なら好かれはしない。だって、「ばちあたり」な冒瀆魔法をつかえるから。
ダストくんがやわらかく云った。
「でも普通、駆使されてるなら、とやかく云わないもんだ。サーダとほーじには悪いけど、ネクゼタリー卿はちょっと……主に忠実であろうとする気持ちが、強すぎる気がする」
俺はなにも云えない。こちらの感覚がわからない。あっちには、伝説上のいきものというのはあったけど、それが実際に存在してはいなかった。
伝説だと思われていたのが本当に居た、という場合は、捕獲されて色々調べられて、生態でもなんでも丸裸になってお仕舞だ。神秘性もこわさもなくなってしまう。
こちらでは、伝承に出てくるいきものが本当に存在することは多々ある。そして、魔物には知恵があり、一部は人間並みに賢いので、簡単に捕獲して生態を調べるなんてことはできない。だから、こわさも、神秘性も、なにもかもが維持されている。
特にレットゥーフェルみたいに、めったに人里に近寄らないとされているまものなんて。
ネクゼタリーさんの反応が過剰なものなのかどうなのか、俺には判断できなかった。ダストくんが、荒れ地の近くに生まれ育ち、駆使されたいきものになれているから、こわがらない、という可能性もある。
思い出して、もう一度ダストくんを仰いだ。「ダストくんは、平気なの。猫とか犬とか、きらいなのに」
ダストくんは犬猫が苦手、というか、こわいのだ。御山で飼っているひとが居て、腰がぬけるかと思ったと云っていた筈。それなのに、レットゥーフェルは気にしないんだろうか。
「あいつらは駆使してても、魔につかれたら大変なことになるからなあ」
ダストくんは苦笑いして、つやつやした髪を左へ寄せ、前へ持ってきた。機械的に、見もせずにあみはじめる。信じられない速度で細かいみつあみができていく。「タスはもともと、魔につかれた状態で、マオに駆使されてるだろ」
「……うん」
「魔につかれたものが、尚更魔につかれることはない。ってことは、ある朝起きたらタスが魔物になっていました、なんてことは起こらないよな? だって、もう魔物だろ」
寸の間、なにを云われたのかわからなかったが、すぐに頭に浸透した。俺は頷く。
「だったら、平気だよ。こわいのは魔物としての強さじゃない。突然、それまでと違うものにかわっちまうのがこわいんだ」
感想ありがとうございます。
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