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タスの魔力。
混乱してきた。なにを云ってるんだろう?
「なに、それ? どういう意味?」
「主は面白いことをする」
タスは肩を震わせた。笑っているのだけれど、楽しそうではない。
「タス。きちんと説明、して」
「ああ。わたしはレットゥーフェルだ。レットゥーフェルは強い。ほかの魔物達も、レットゥーフェルは避けようとする」
なんの話をしているんだろう。いや、たしかに、レットゥーフェルとホートリットは、魔物であってもおそれた様子を見せる。クロイダイド達がそうだった。よく考えたら、荒れ地で戦ったヴェルツや、魚の骨みたいなやつらも、タスに積極的に向かっていってはいなかったな。巨大ヴェルツは別だ。
でもそれが、なに?
タスは腕を解く。
「お前は……というか、人間は魔力に鈍い」
「え?」
「あの、ちびの煩い娘は敏感だが。あれは、魔物並みに魔力を察している」
「……ねえ、もしかして、それってユラちゃんのこと?」
タスは俺の質問には答えず、長広舌を振るう。
「ものに宿った魔力も、それぞれの魔力の差異も、かなり感じとっているようだな。魔につかれているのではないかと疑った。我らと同じ魔物ではないかと。しかし、魔につかれているお前はなにも感じとらないから、わたし達の教わっていたことは嘘だった」
「ねえタス、なんの話をしてるの?」
「魔物達は魔力を感じる。おそらく人間とは感覚が違う。魔力が見えるように、手にとるようにわかる、そこにあるようにわかる。だからお前を狙った。お前が一番、魔力を多く備えていた」
「ちょっと、待って」
タスの言葉は、なんとなく理解できた。
魔物は魔力に敏感だというのは、それは今までの経験上でも、可能性としては考えていたことだ。還元過多による魔物の襲撃は、それで説明がつく。空中に漂う素は時間が経てば魔力に変化するそうだから。
魔物は魔力を察する。それはいい。
「ねえ、それじゃあどうして、あの……ああくそ」
銃、を云えない。畜生。
俺は頭をかきむしって、なんとか喋ろうとする。「俺の。あっちで、仲間が死んでしまったんだよね。その時、魔法だと勘違いしたんでしょ」
「あちらの人間は魔力がある。魔力のある人間が多いのだから、魔法だと考えるのは当然だ」
あ。
ああ、そうだよな。
魔力はあるんだ。あっちの世界にも。
じゃないと、俺が魔力の枯渇を起こさなかったのはおかしい。
「それで、ねえ、ニニくんが襲われたのが」
「わたしはあいつに魔力をつけた。レットゥーフェルだと魔物達が感じるように」




