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戦闘力として、なくすのがおしいと思った、ということか。
たしかに、俺達のパーティはバランスがとれていた。ヤラとニニくんの治療班、カルナさんミエラさんエクシザの物理攻撃班、タスの物理・魔法攻撃、ほーじくんと俺の魔法攻撃、マルジャンの補助。ニニくん達の体調がもっとよければ、もっと歩みもはやかったろう。それくらい、パーティとして完成されていた。
治療をできる人間が減るのがおしい、という意味かと思ったが、それだけではないらしい。タスははじいったふうに云う。
「それに、あいつの様子を見ているのがつらかった。わたしは、自分で思っているよりも、弱い。あいつを見ていると、まともな状態でいられなくなる。動揺するのがいやだった。動揺するのも、動揺したからわたしは弱いのだと思うのも」
ああ……タスがニニくんに対して、ちょっとつんけんしていたのは、それがあったのか。
怪我をしているひとや、病気になったひとを、見たくない。そういう心理だ。難しいが、事象としては理解できた。
苦しんでいるひとを見るのがつらい。共感しすぎてしまう。寄り添いすぎてしまう。
もしくは、自分だって怪我をするかもしれないし、病気になるかもしれない。それを目の前につきつけられたような気分になって、落ち着かない。
タスはニニくんを見て、そういう気持ちになっていたのか。
タスは口許を拭うようにした。
「だから、あいつが魔物に狙われにくくなるようにしたかった」
「え?」
「これ以上あいつが傷付くのがいやだった。考えただけでも気分が悪くなった。気分が悪くなって、弱さが増しているのに気付いて、それもいやだった」
「ねえタス、それは、弱いっていうか、心配りとか気遣いとか、優しさの類だと思うよ」
「知らん。あれがなんでもいい。あの気分が、いやだった。それだけだ。今だってそうだ。こんな気分を味わうくらいなら、レティアニナを殺してしまったほうがいい」
俺が反論する前にタスは小さく笑った。「愚かだ。最初からそうしておけばよかった。だができなかった。あの怯えきった小さないきものを殺すことがわたしにはできなかった」
しようとした、という口ぶりだった。俺は顔をしかめる。
「タス」
「だから、かわりに、襲われないようにしてやろうと思った。怯えなくていいように」
タスはまた笑う。
「愚かさもここまでいくと笑えるな。主が筋書きを決めなさったのかもしれん。レットゥーフェルの王にまでなったわたしが、人間の、ちびの癒し手に、執着した。生かすことを望んだ。その結果がこれだ。同胞達がわたしの魔力に気付いて、襲ってきた」
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