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タスの言葉の意味がわからない。「なに? どういう意味?」
タスはそれには答えない。
「レットゥーフェルは癒しの力を持たない者がほとんどだ。普通は治療なんてできない。意識を失って時間が経てば、楽にしてやる」
思わず腰をうかす。声が掠れる。
「ニニくんに」
「必要なら手を下す。それが情けというものだ」タスはまた笑った。「しかし、わたしがなにもしなくてもあいつは死ぬだろう。意識が戻らずに、無事だった者は、ない」
断言だった。
多分、タスは今まで、仲間達がそういう状態になって、死んでしまうというのを、沢山経験してきたんだろう。
こっちの世界の医療は、恢復魔法を除けばレベルが低い。当然、意識不明のひとにそれなりの処置をする技術はない。だから今ニニくんは、リッターくんや、カルナさん達が、上から下まで全部お世話している情況だ。
じっと座って、或いは寝ていても、褥瘡にならないように、頻繁に体を動かしたり、なんとかのみこめそうなものを与えたり、勿論お手洗いのことだってある。人間は、食事と排泄抜きでは生きられない。
レットゥーフェルは、ある程度以上の怪我をしたり、「見込みがない」と思ったら、それが兄弟だろうとためらわずに殺していた。俺はそれを目の前で見た。簡単に、還元してしまうのを。
タスも、その常識のなかで生きてきたのだ。
癒しの力を持つ者がほとんどおらず、意識を失えば自力で治療することはかなわない。おそらく、おくすりをつくったりつかったりすることもさほどないのだと思う。そして、「強い者」が一番いいとされている社会のようだから、意識がなく他人に生死が左右される状態になったら、殺してあげるほうが名誉を保てると思っているのだ。
俺は座りなおした。
「ニニくんに手を出さないで」
「どういう意味だ。お前はわたしにあいつを預けた。あいつはわたしを信用している。生き恥をさらすことをあいつは望まない」
俺はタスを、じっと見る。目を細くする。
「タスが望んでいないんでしょ? それは」
「なに?」
「タスが、ニニくんが弱ってて、生きるか死ぬかの状態に耐えられないから、自分が楽になりたくてニニくんを殺そうと思ってる。ニニくんが怪我をしたこととか、自分がそれを助けられなかっ」
「もういい」タスは顔を伏せた。「やめろ。やめてくれ!」
俺は口を噤んだ。タスは膝の上でかたく拳をつくる。その腕が震えている。
顔を背けた。俺だってこんなこと云いたくなかった。でも、タスがニニくんを殺そうと思っているのは本当みたいだから、停める為に……。
自己嫌悪で吐きそうだ。




