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「えーと」
シシを見る。シシは頷く。
リャクークを撫でているほーじくんを仰いだ。ほーじくんは小首を傾げる。
もう一度、シシへ目を遣った。
「いいの? シシ?」
シシはこっくり、深く頷く。
「よよ、いっしょ」
俺は頭をかいた。ヨヨと一緒に居たいから、自分も使役してほしい、ということかな。「うーん。じゃあ……」
シシの額に手をつける。口のなかで、小さく、使役、と云った。
シシはぴょこんと跳びはね、ヨヨとダンスを始める。ふたりは嬉しそうに踊りながら、魔物用の馬車の向こうへと行ってしまった。使役、できたけど、よかったのかな。
立ち上がる。ほーじくんがくすっとした。「可愛いね」
「ねえ……」
同意するしかないので、俺は頷いた。
「マオ、肉ないか?」
魔物用の馬車の前へまわると、トゥアフェーノ達に餌をあげているダストくんからそう訊かれた。その傍で、エクシザが地面に座ってまるくふくらみ、小さく唸っている。目を細くして、不機嫌そうだ。「あるよ」
「じゃあ、俺がこいつに食べられる前に、なんか出してくれ」
ダストくんが笑い含みに云い、エクシザはそれを睨んでいる。ダストくんは体力が高い所為か、「駆使された動物」は大丈夫だという意識が働いているのか、エクシザをさほどおそれた様子はない。
エクシザはというと、今にもダストくんの頭をくちばしでつつきそうな表情である。俺は苦笑いで、木桶に牛肉を盛り、エクシザの前へ置いた。エクシザはそもそも、人間はまずいからきらいなので、すぐにダストくんから意識を逸らした。
サーダくんは、マルジャン達をタオルで拭いてあげている。マルジャン達はおとなしいので、サーダくんは落ち着いた手付きだった。ほーじくんがそちらへ行く。
兄弟は、なにも喋らない。ほーじくんがサーダくんのはねに軽く振れ、サーダくんがほーじくんを見て苦笑のようなものをうかべた。
それだけだ。兄弟には、なにか通じるものがあるのだろう。
サーダくんのいらいら、ぴりぴりした雰囲気は、ほとんどなくなっていた。ダストくん効果だと思う。それに、俺が言葉をとりもどしたから。
ドライさぼてんがダストくんの手からなくなった。「マオ、タスにくだものあげてくれ」
「あ」
ティヴァインの兄弟を見ていた俺は、苦笑いで収納空間からくだものをとりだす。タスは馬車のなかに居るらしい。外がきらいなのかな。それとも、人間に見られたら騒動になると思っているのかな。
ステップにあがって扉を開く段になって、ダストくんが「タス」と呼んだことを認識した。彼は、そういうところがある。そういう美徳が。
俺が美徳だと思っているだけかもしれないが。




