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多分、ネクゼタリーさんが手配したのだろうけれど、シシの服はあたらしいものになっていた。昨日は違ったから、昨夜のうちにかえさせたのかな。くったりした感じがなくなっている。口許を隠す布も、上等なものになっていた。ついでに、うす汚れた感じももうない。
ヨヨがシシから目をはなし、俺を見た。俺は頷く。ゆっくりと、しっかり伝わるように意識して、言葉を選んで喋る。
「放り出すってことじゃなくて。ヨヨが戻りたい場所が、どこかわからないけど、俺が行けるところだったらつれていってあげたい。もしだめでも、成る丈近いところへ行くつもり。でも、今、ふたりで一緒に群れに帰りたいなら、そうしていいよ。俺は、停めない。群れのひと達も、心配してるだろうし」
ヨヨはじっと俺を見ている。その瞳の色は金だった。前は、緑っぽいと思っていたのだが、純粋な金に見える。光の加減で色がかわるのだろうか。魔物にはくわしくない。
シシがヨヨのせなかを、とんと叩いた。もしょもしょっと、なにか云うのだが、それはおそらくニーバグの言葉だ。俺にはわからない。
ヨヨはシシに、こっくり頷く。それから俺を見た。「ヨヨ。まだ、マオといる」
「え? いいの? ああ、俺は、嬉しいけど、群れのひと達が……」
ヨヨは頭を振った。それから、シシのせなかをとんとんっとする。「シシが、ヨヨ、いなくしたから、さがしてた。みんな。じゃましない」
はあ。はあ?
よくわからん。
わからんが、ヨヨ達の群れでは、ヨヨが居なくなったのはシシの所為ということになっている、みたいなことかな。それで、さがしていた。シシひとりで。
うーん。邪魔っていうのは、ほかのニーバグがヨヨをさがすこと、かもしれない。シシが見付けるべきとされてたのか? なにか、宗教的なものなのかな。
それとも、シシが是が非でも自分で見付けるから、邪魔しないでって出てきたとか。
シシとヨヨの様子を見るに、どうも後者っぽい。シシは本当にヨヨが好きみたいで、ぎゅっとヨヨの服を掴んでいるし、じっとヨヨを見て目をはなさない。邪魔って言葉も、なんか、それらしいよな。
あ、ピアス、ヨヨがつけてる。
昨日までシシがつけていたピアスが、ヨヨの耳に移動していた。よく見ると、ヨヨは首飾りもシシからもらったみたい。鎖がちょっとだけ見えている。それ以外は服の下だが、鎖に見覚えがあった。
「まお?」
「あ、ごめん、なに?」
シシとヨヨの関係性について考えていたら、ぼーっとしてしまっていた。ヨヨが俺のローブの袖をちょんとひっぱる。「シシも、しえき、して」
はあ。




